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こんにちは。猫山と申します。精神科医です。
相談者様が本日呈された症状は「歯科恐怖症」だと思われます。
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それも含めて、相談者様は「広場恐怖」の診断基準を満たしている可能性が高いと思われます。
この場合の広場とは、広い場所、という意味ではなく、「何かが起きてもすぐには逃げ出せない、助けを求められない場所」という程度の意味です。飛行機などは典型ですし、電車、バス、地下鉄、人ごみ、歯科、美容室などもこれに当てはまります。
治療は薬物療法が主体になりますが、それだけでは広場恐怖が治りきらないこともあります。
相談者様の場合も、まず薬物療法で恐怖感を一定以上までコントロールした後に、行動療法を用いて行動範囲を広げていく必要があると思います。
広場恐怖の薬物療法の定石は、まずSSRIと呼ばれるカテゴリーの薬剤と安定剤を適切に用いて発作をコントロールすることです。安定剤だけでは駄目です。
薬物療法が一定の効果を現わせてきたあたりで、行動療法を並行して行います。
ここでは、もっとも多く見られ、説明もしやすいので、「1人で電車に乗れるようになる」ことを目標とした例をあげますが、これを患者様ごとにアレンジしたものが行われます。
具体的には、以下のように行います。
安定剤を飲んだ30分後に空いている時間帯に各駅停車に1駅分、誰かと一緒に乗る。
⇒これで恐怖感が起こらなければ、同じ条件で2駅分乗る
⇒やはり恐怖感が起こらなければ、安定剤を飲んだ30分後に各駅停車に2駅分、1人で乗る
⇒安定剤は飲まず、しかし持参して(水なしでも安定剤を飲めるようにしておくと便利です。できなければペットボトル持参)、恐怖感の予兆があったら服用することにして各駅停車に2駅分、1人で乗る
……というふうにステップアップしていきます。
元も子のない、というか、ある意味わかりやすいアプローチではないでしょうか。
これを行動療法的アプローチといいます。行動療法で大切なのは「成功し続けること」です。
電車に乗って恐怖感が起こると、次に乗るときも「また恐怖感が起きるのではないか?」と無意識に思ってしまうでしょう。
これを「予期不安」といいます。
相談者様における「実際にその場面に近づき、緊張感が増してくると動悸が激しくなり、息苦しくなり、その場から逃げ出したく」なるのは典型的な予期不安です。
予期不安は恐怖感の呼び水となり、発作を起こしやすくします。そのような状態で電車に乗れば、また恐怖感が起きてしまいます。
すると、「やはり電車に乗ると恐怖感が起きるんだ」という確信が深まってしまい、その次に電車に乗る時の予期不安をより強いものにし、より発作が起こりやすくなります。
このようにして条件反射の悪循環が生じ、電車に乗るのが怖くなってしまうのです。
行動療法はこの循環を逆に回し、電車に乗っても恐怖感が起きない経験を積むことで予期不安を小さくしていきます。
日本では、SSRIを広場恐怖の治療用に適切に使える精神科医は少数派で(相談者様が通われている心療内科の主治医はいかがでしょうか?)、行動療法となると、行われている施設すら限られますが、インターネットなどで検索し て、この標準治療を行える医療機関を受診されることをお勧めいたします(JustAnswerでは特定の医療機関の推薦・紹介は行っていません)。
以上、ご参考になれば幸いです。
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現在、精神科領域でもっとも一般的に用いられているDSM-IV-TR(精神疾患の診断・統計マニュアル)における広場恐怖の診断基準を以下にお示ししておきます。
本来、精神科疾患の診断はこのようなチェックリストに当てはめて考えるべきものではありませんが、このようなネット相談では使い勝手がいいので。あくまでご参考まで、ですが。
A. 逃げるに逃げられない(または逃げたら恥をかく)ような場所や状況、またはパニック発作やパニック様症状が予期しないで、または状況に誘発されて起きた時に、助けが得られない場所や状況にいることについての不安。広場恐怖が生じやすい典型的な状況には、家の外に一人でいること、混雑の中にいること、または列に並んでいること、橋の上にいること、バス、汽車、または自動車で移動していることなどがある。
B. その状況が回避されている(例:旅行が制限されている)か、またはそうしなくても、パニック発作またはパニック様症状が起こることを非常に強い苦痛または不安を伴いながら耐え忍んでいるか、または同伴者を伴う必要がある。
C. その不安または恐怖症性の回避は、以下のような他の精神疾患ではうまく説明されない。たとえば、社会恐怖(例:恥ずかしい思いをすることに対する恐怖のために社会的状況のみを避ける)、特定の恐怖症(例:エレベーターのような単一の状況だけを避ける)、強迫性障害(例:汚染に対する強迫観念のある人が、ごみや汚物を避ける)、外傷後ストレス障害(例:強いストレス刺激と関連した刺激を避ける)、または分離不安障害(例:家を離れること、または家族から離れることを避ける)。