お待たせしました。
もう3年もお薬を服用されているわけですから、数十分の回答の遅れが何か重要な差異を生むことはありません。
また、これまでにお聞きしたことは回答をするうえで必要な情報です。情報リクエストが複数回に及んだことはご容赦下さい。
まず、スルピリドに関しては、依存は生じていません。もともと依存性があるお薬ではありませんし、服用量が少なすぎます。率直に申し上げて、抗うつ効果は望めない用量です。
スルピリドというお薬の用法・用量を以下に引用します。
********************************
胃・十二指腸潰瘍:1日150mgを3回に分割経口服用する。
うつ病・うつ状態:1日150~300mgを分割経口服用する。1日600mgまで増量することができる。
統合失調症:1日300~600mgを分割経口服用する。1日1200mgまで増量することができる。
********************************
相談者様はスルピリドを1日100㎎しか服用されてこなかったわけですから、このお薬の効果を享受できたとは思われません。良くなられたのは、自然経過でしょう。
スルピリドは前述したように依存性がない化学物質であり、しかも脳に十分届く量ではないわけですから、急に止めたとしても離脱症状は起こりません。
一方で、リーゼを含む精神安定剤は比較的強い依存性があり、毎日服用していたとすれば、平均3ヶ月で依存性が生じ、急な減量によって不眠、不安、自律神経症状(更年期障害の症状に近い症状です)が起こります。
従って、寝前薬を中止しなかったことによって起きた不眠と発汗はリーゼの離脱症状が1つの可能性として考えられます。
逆にスルピリドの離脱症状という可能性は、薬理学的な側面からは否定的です。
ただし、今回の減薬の失敗の原因の1つは、寝前薬として処方されていたスルピリドとリーゼを同時に中止したことです。
増やすにせよ減らすにせよ、薬は1種類ずつ動かすのが薬物療法の基本です。
スルピリドとリーゼを同時に減らして不都合が生じた場合、どちらを減らしたせいでその不都合が生じたのかが分からなくなるからです。
そういう意味では、漫然と3年間お薬を出し続けたこと、減薬の方法が稚拙であることの2点をもって、主治医の技量は高く評価できるものではありません。
各論を申し上げるのであれば、スルピリドは止めてしまって問題が無いと考えます。ただし仮にも3年間服用してきたお薬ですから、粉薬に変更して、1~2週間に10mg程度のペースで減量するのが適切でしょう。
その後にリーゼの減量を行うのが適切ですが、1日2回投与のうちの1回を止めただけで「発汗があり体が火照って、眠れませんでした」とのことですから、単にお薬の量を減らすことは得策ではないでしょう。
こういった場合はまず、リーゼをメイラックスやセルシン(ジアゼパム)といった、作用時間が長い安定剤に変更した上で、その作用時間が長いお薬を減量していく方法をとります。
作用時間が長いということは、長く体内に留まるということですので、仮に減らしたり止めたとしても、急に体の中からお薬が消失するということがなく、離脱症状が起こりにくいからです。
主治医と、減薬の方法について、上述のような方法がとれないか相談されてみることをお勧めします。
これは精神安定剤を止めるに当たっての標準的な方法です。
以上、ご参考になれば幸いです。