ご相談、拝見させていただきました。労働問題担当の社会保険労務士です。
ご相談者様のおっしゃられている通りです。
今回の会社の措置は労働者にとっての不利益変更であり、労働条件の変更ですので、労働契約法3条と8条で定められている通り、「労働者の同意」が必要なケースであり、個々の労働者の同意を得ないまでも、就業規則を変更する事項ですので変更後の就業規則の周知、が求められるケースです。就業規則の変更は、労働者への周知がなければ無効とされます。
労働者の同意を得ていないという点では、労働契約法3条及び8条違反ですし、就業規則の変更が周知されていないのは労働基準法106条違反です。
労働契約法には罰則はありませんが、労働基準法106条違反は「30万円以下の罰金」という罰則が設けられている法律違反です。
労働者が会社とこの点を争うには、
(1)労働局長の助言・指導
(2)あっせん
(3)労働審判
という手段が考えられます。
一般的な方法として、(1)労働基準監督署の助言・指導という制度がありますが、これは会社の住所地を管轄する労働基準監督署へ「会社の労基法106条違反を申告」することによって、労働基準監督署が会社に対して調査や聴取を行い、改善をするよう都道府県労働局長から助言、指導や勧告がなされる制度です。
労働基準監督署に調査に動いてもらうためには、「相談に来ました」というだけでは相談を聞くだけで終わってしまう可能性もありますので、「会社が労基法106条違反を犯しているので、申告します」と「申告」である旨をきちんとお伝えください。
【埼玉労働局・労働局長による助言・指導制度】
http://saitama-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/hourei_seido_tetsuzuki/kobetsu_roudou_funsou/jogen.html
次にあっせんですが、これは個別労働紛争解決制度と呼ばれており、労働者個人と会社との和解を目指す制度です。
都道府県労働局に申し立てを行い(労働基準監督署内の総合労働相談コーナーでも受け付けてもらえます)、あっせん委員と呼ばれる専門家が労使双方の主張を聴き、証拠の認定は行わず和解案を提示してくれる国の制度です。費用はかかりませんし、弁護士などの専門家を依頼する必要もありません。
ただしあっせんは、申し立てをしても相手側が参加を拒否できる制度のため、会社が参加を拒否したらあっせんが行われることなく、終了となります。
【埼玉労働局・あっせん制度】
http://saitama-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/hourei_seido_tetsuzuki/kobetsu_roudou_funsou/assen.html
最後に労働審判ですが、こちらは地方裁判所に申し立てを行い、労働審判官(裁判官)と労働審判員(弁護士などの専門家)が労使双方の主張を聴き、証拠の認定を行い、原則3回以内の審理で調停や審判を行ってくれる国の制度です。
こちらも裁判ではありませんので、弁護士を依頼する必要はありません。あっせんとは異なり、当事者に参加義務がございますので、申し立てをすれば会社は労働審判への参加を拒否できません。提示される調停や審判に労使双方が合意すれば和解となり問題は解決します。提示された調停や審判に対して当事者が最終的に異議申し立て(不服)をした場合には労働審判は打ち切りとなり、通常の訴訟に移行する、という制度です。
あっせんや労働審判は労働者個人と会社とのトラブル解決の手段ですので、ご相談者様が他の労働者も代表して会社との争いの矢面に立つことになってしまいます。ですので現実的な対応としては(1)労働局長の助言・指導制度の利用がよろしいかと存じます。
労働基準監督署への申告の際に、「会社に申告した事を知られたくないので、名前は出さないでほしい」と依頼しておけば配慮してくれます。
調査に入る際の名目を「従業員さんから申告があったので、調査に来ました」ではなく、「労働局の年間スケジュールに基づいて今回はお宅の会社が調査対象となりました」という行政による抜き打ち調査の形にしてくれるなどです。
調査と言っても不利益変更の部分だけを調査するわけではないので、ご相談者様が申告した、という事実が会社に知られることはほとんどありません。
労働基準監督署内にある総合労働相談コーナーに赴いていただけたらと思います。