知的財産権を専門とする者です。
著作権は「著作物」に発生します。そのため、「著作物」でないものを利用する場合は著作権者の許諾は不要となります。
この「著作物」とは、法律上以下のように規定されています。
「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」(著作権法2条1項1号)。
すなわち、著作物といえるためには、「創作的な表現」であることを必要とします。
例えば、死亡記事や人事異動、「東京タワーの高さは333メートルです」など単なる事実を述べたに過ぎない文章には、創作性がないとして「著作物」とはなりません。
また「暑中見舞い申し上げます」やそれに続く「猛暑が続いておりますが、皆様にはますますご健勝のことと存じます。」などのような暑中見舞いの挨拶や季節の挨拶に使われる文言、通常の表現による契約書など、定型的な文章といったものなども創作的な表現とは認められず、「著作物」とはなりません。
要するに、その文章を作成するに当たり、作者において独自の表現の選択の幅が少ない場合において創作した文章等は、創作性が低く著作物にはならない可能性が高まります。
そのため、文章の一部分といった短い部分のみを利用した場合は、その短い文章が著作物となる可能性は低いものと考えられますが、短い文章でも俳句や短歌などのような場合には創作性が認められて「著作物」となる場合もあります。
また、著作物における「創作性」とは、高度な芸術的、文芸的なものである必要はなく、上述した事実のみや定型的なものではく、また、先行する他人の表現と似ていなければいいという程度のものですので、創作性について高度な芸術性まで要求しているものではありません。
また、「表現」について著作物の対象としていますので、アイデアにすぎないものについては、それが創作性のあるものであっても、著作物とは認められません。そのため、そのアイデアのみを模倣し、異なる表現とした場合には、著作権の侵害とはなりません。
また、「思想又は感情」の「創作的な表現」が著作物として認められますので、月の軌道データのような自然科学上の事実、電車のダイヤ等のデータ、時刻表、理科年表などデータをほぼそのまま記載しているにすぎない文章は、「思想又は感情の創作的な表現」とはいえず、「著作物」には該当しません。
さらには、日常の挨拶文(時候の挨拶文、転居通知、出欠の問合せなど)、商用文(物品の発注、代金の督促など)、スポーツやゲームのルール自体(ルールの解説書は除く)、題号(映画、書籍、CD等のタイトル)のようなものも「思想又は感情の創作的な表現」ではないといえます。
要するに「創作的な表現」であるか否かによって「著作物」かどうかが判断されることになります。
これらのことに照らしますと、鋼の錬金術師に掲載されている「創作的」な表現部分の文章をそのまま利用したり、イラストをそのまま利用しますと、それらは「著作物」となり得ますので著作権のうちの複製権と抵触するものと思われます(同法21条)。
また、それらをネットやSNSに掲載しますと公衆送信権とも抵触するものと思われます(同法23条)。
先にも申しましたが、著作権法は「表現」を保護するものであって「アイデア」は保護しないことに照らし合わせますと、実質的には鋼の錬金術師の文章と同じであっても、質問者様が独自に別の「表現」に変えたものであれば、それは著作権の侵害にはならないということになります。
したがいまして、鋼の錬金術師の文章やイラストをそのまま利用する場合には、有料・無料とは関係なく、著作権者の承諾を得る必要があろうかと思われます。