知的財産権を専門とする者です。
本は「著作物」ですので著作権が生じています。
この「著作物」とは、法律上以下のように規定されています。
「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」(著作権法2条1項1号)。
すなわち、著作物といえるためには、「創作的な表現」であることを必要とします。
例えば、死亡記事や人事異動、「東京タワーの高さは333メートルです」など単なる事実を述べたに過ぎない文章には、創作性がないとして「著作物」とはなりません。
また「暑中見舞い申し上げます」やそれに続く「猛暑が続いておりますが、皆様にはますますご健勝のことと存じます。」などのような暑中見舞いの挨拶や季節の挨拶に使われる文言、通常の表現による契約書など、定型的な文章といったものなども創作的な表現とは認められず、「著作物」とはなりません。
要するに、その文章を作成するに当たり、作者において独自の表現の選択の幅が少ない場合において創作した文章等は、創作性が低く著作物にはならない可能性が高まります。
そのため、文章の一部分といった短い部分のみを利用した場合は、その短い文章が著作物となる可能性は低いものと考えられますが、短い文章でも俳句や短歌などのような場合には創作性が認められて「著作物」となる場合もあります。
また、著作物における「創作性」とは、高度な芸術的、文芸的なものである必要はなく、上述した事実のみや定型的なものではく、また、先行する他人の表現と似ていなければいいという程度のものですので、創作性について高度な芸術性まで要求しているものではありません。
そのため、本の全部でなくても、その一部であっても、その一部が創作性のあるものでしたら、その一部は著作物となりますので、そのような一部をYouTubeで紹介しますと、著作権法上では「口述」となり(同法2条1項18号)、口述権と抵触することになろうかと思われます(同法24条)。
また、そのような一部をYouTubeなどのネット配信しますと、公衆送信権とも抵触することになろうかと思われます(同法23条)。
一方、著作権法上の権利制限規定(同法30条~49条)のいずれかに該当する場合には、許諾を得ずに利用しても問題とはなりません。例えば、私的使用目的の複製、引用、非営利目的の上演・・・等がありますが、本件のような場合には、これらの制限規定には該当しないものと思われます。
なお、著作権法は「表現」を保護するものであって、「アイデア」を保護するものではありません。したがいまして、その本の内容と実質的に同じ内容のものを表現を変えて紹介する場合には、著作権と抵触しなことになろうかと思われます。