知的財産権を専門とする者です。
商標権の侵害となる場合とは「指定商品もしくは指定役務またはこれらに類似する商品もしくは役務に登録商標またはこれに類似する商標を使用する行為」をいいます(商標法2条3項、25条、37条等)。
登録商標である「ママと子どもの歯医者さん」の指定役務は「歯科医業」であろうと思われますが、質問者様も歯科医院を経営されているとのことですので、質問者様がその登録商標を歯科業務に関する看板やホームページに使用しますと、形式的には、指定役務についての登録商標の使用ということになり、商標権の侵害というなろうかと思われます。
一方、商標の「使用」につきましては、商標法2条3項におきまして、具体的な使用態様が規定されてます(同1号~10号)。
例えば、本件に該当すると思われる使用態様として、役務(歯科医業)に関する広告(看板、ホームページ)に標章(「ママと子どもの歯医者さん」)を付して展示したり、電子的方法(ネットなど)により提供する行為が挙げられています(同8号)。
ただし、これらの使用態様であっても、商標の機能を発揮するような態様で使用されていなければ実質的な登録商標の使用とはならないため、商標権の効力が制限されます(同法26条1項6号)。商標法の条文では商標権の効力が制限される使用態様の一つとして以下のように記載されています(26条1項6号)。
「前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標」
すなわち、商標の機能と申しますのは、「自他商品等識別機能」、「出所表示機能」、「品質保証機能」、「宣伝広告機能」といったものがございますので、例え形式的には商標の使用であっても、これらの機能を発揮するような態様で使用されていなければ、商標権の効力が制限されて、商標権の侵害にはならないことになります。
例えば、登録商標をある文章の一部として使用されているに過ぎない場合には、形式的には商標の使用であっても、「自他商品等識別機能」や「出所表示機能」等を発揮している態様とはいえません(すなわち、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない)ので、商標権の効力が制限されるということになります。
これらのことから判断しますと、登録商標である「ママと子どもの歯医者さん」の自他商品等識別機能や出所表示機能などが発揮されない態様で使用される場合には、商標権の侵害にはならないことになります。
そのため、ホームページの中の文章の一部に「ママと子どもの歯医者さん」という文言が入っても問題はないものと推測されます。ただし、看板への「ママと子どもの歯医者さん」の表示につきましては、その表記の仕方次第では需要者がその商標権者歯科医院と認識する可能性は否定できないものと推測されますので、ご注意が必要かと思われます。