知的財産権を専門とする者です。
結論から先に申しますと、質問者様の作成された「YouTubeチャンネル戦略のコンテンツ」(以下単に「コンテンツ」とします)を、他人が無断で利用する行為は著作権侵害となります。
そのため、質問者様は、その他人に対して、コンテンツの使用を禁止させるための差止請求を行うことができます(著作権法112条)。また、他人の使用によって質問者様に金銭的な損害が生じている場合には、その損害額を賠償してもらうための損害賠償請求(民法709条)をすることができます。
以上は民事的な措置ですが、侵害は刑事罰の対象ともなります。これは10年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金またはこれの併科となります(著作権法119条)。
刑事罰は親告罪といいまして、権利者が告訴しない限り、検察は勝手に起訴することはありませんし、告訴したかといって検察がそのすべてを起訴するとは限りませんが、法律上は著作権の侵害に対しては、刑事罰の対象にはなるということです。
それでは、以下に詳細についてご説明します。
1)法的な処置を取ることが可能なのか。
上述しましたように可能です。
著作権法によって保護されるのは「著作物」であって、著作物であれば著作権が生じます。反対解釈としまして、「著作物」でなければ「著作権」は発生しません。著作権が発生しなければ著作権法によって保護されることはないということになります。
そのため当該コンテンツが「著作物」であるか否かということがキーポイントとなります。
ここに著作物とは著作権法上では「思想又は感情を創作的に表現したもの・・・」と定義されています(同法2条1項1号)。
端的に申しますと、著作物とは「創作的な表現」であることが必要です。
例えば、「東京タワーの高さは333メートルである」とか、人事異動や死亡記事などのような単なる事実を述べたに過ぎない表現、「暑中見舞い申し上げます」やそれに続く「猛暑が続いておりますが、皆様にはますますご健勝のことと存じます。」などのような暑中見舞いの挨拶や季節の挨拶に使われる文言、通常の表現による契約書など、定型的な文章といったもの、などは創作的な表現とは認められず、「著作物」とはなりません。
ただし、著作物における「創作性」とは、高度な芸術的、文芸的なものである必要はなく、上述した事実のみや定型的なものではく、また、先行する他人の表現と似ていなければいいという程度のものですので、創作が高度であるか否かは関係がありません。
極端な例としましては、人間が猿に指示して描かせた絵であっても「著作物」となりえます
(この場合は、猿が描いていますが、実質的には指示を出した人間が描いた絵ということになります)。
したがいまして、質問者様のコンテンツは当然に「著作物」となり、著作権が生じます。
そして、著作権は原始的には、著作物を創作した者である「著作者」(同法2条1項2号)に生じます。
ところで、著作権につきましては、他の知的財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)と異なり、申請、出願、登録、手数料の納付など、いかなる手続きをしなくても、著作物ができた時点で自動的に著作権が生じます。
これを無方式主義といいます(著作権法17条2項)。これは世界的に採用されている制度です。
そのため、当該コンテンツの著作者である質問者様が著作権者の地位を有しますので、他人が無断で著作物を利用した場合には、著作権者である質問者様が、自己の権利である著作権の侵害を理由として、先に申しました民事上、刑事上の措置をとることができるということになります。
そして、「これと全く同じようなことを他の情報販売者が自分の教材内で話した」ということであれば、この情報販売者の行為は無断で質問者様のコンテンツ(著作物)と同一のコンテンツを公に口述したことになりますので、著作権のうち口述権(同法24条)の侵害行為となりえます。
2)もし可能ならどのような手順をとれば法的な処置が取れるのか
差止請求をするには、相手方が著作権を侵害していることを立証する必要があります。
それには、質問者様のコンテンツが相手方より先に創作されたことを立証する必要がありますので、コンテンツの作成の日付を客観的に確定できる証拠物件が必要となります。
例えば、コンテンツの原稿をワープロで作成したのであれば、その作成年月日がパソコン上に記録されているはずですので、そのコンテンツを記録しているパソコンなどが物証となります。そのような物証は有力な証拠となります。
損害賠償請求につきましては、①侵害行為の他に、②故意または過失の存在、③損害、④侵害と損害の因果関係、の4つの要件すべてを原告が立証する必要があります。
①の侵害につきましては差止請求と同様に、質問者様が先にコンテンツを創作したことを立証すればいいということになります。細かく言いますと、相手方が質問者様のコンテンツに依拠(拠りどころとして、質問者様のコンテンツを見ながら又は過去に見た記憶に基づき、質問者様のコンテンツと同じコンテンツを作成)した場合に著作権侵害となり、ほとんどありえないことですが、偶然に同じコンテンツを作成したような場合には、その偶然によって創作された同一のコンテンツを他人が利用しても侵害にはなりません。
しかし、今回のような長いコンテンツを偶然に作成したことの立証を相手方がすることはほとんど困難ですので、質問者様としましては、ご自身が先に創作したことを立証さえすれば、①の侵害の発生の要件は満たされるはずです。
また、②の故意または過失も、このような長いコンテンツを利用することに故意も過失もなかったなどということは考えられないので、この立証も問題はないと思われます。
問題となるのは③の損害の発生および④の侵害と損害の因果関係の立証です。
相手方が侵害した時点で、質問者様がすでにコンテンツのビデオを販売しており、相手方の販売によって、その売上が減少したというような事実が存在していたのであれば、その売上の減少分に相当する損害額を帳簿等の提出などで立証することで、③、④の要件をクリアできるのですが、質問者様がまだ販売していない場合には、立証が困難になるかもしれません。
しかし、質問者様が現に販売していない場合であっても、少なくても相手方とライセンス契約を締結していたならば得られたであろうロイヤルティが、得られなったという意味において損害が生じているという立証も可能ではあります。
著作権法には損害額の推定規定というものが規定されており(同法114条)、その第3項では、「著作権者・・・は、故意又は過失によりその著作権・・・を侵害した者に対し、その著作権・・・の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を自己が受けた損害の額として、その賠償を請求することができる。」と規定されています。
この規定は、現に権利者が自己の著作物を利用していなくても相手方に対して損害の発生を主張することができる、と学界でいわれています。
そのため、この規定を根拠に損害額を算定して、損害賠償請求をすることになろうかと思います。ただし、この場合、損害額は小額となる可能性があろうかと思われます。
以上ご説明しましたように、差止請求なり、損害賠償請求なりをするための証拠を収集することが必要となります。
それから、すぐに訴訟を提起するのではなく、相手方に対して上述したような法的根拠を明記して、文章にて、侵害行為をしていること、差止や損害賠償請求する考えがあることなどを伝え、すぐに相手方がそのコンテンツの使用を止めるよう警告し、そして質問者様が望むのであれば、金銭賠償を含めた和解という流れが一般的ではないでしょうか。
現に訴訟をすると判決がでるまでに長期間を要し、訴訟費用を勝訴となるまでは原告が立て替えることになります。その他労力を要しますので、なるべく訴訟せずに解決する方向を目指される方が賢明かもしれません。
そして、これらの作業は、質問者様が一人でするのは大変ですので、お知り合いの弁護士などがおりましたら、その方と共に作業をするのがよろしいかと思われます。
また、そのような弁護士さんがいない場合は、例えば、日本司法支援センター(通称「法テラス」といいます)にご相談してみるのも一つの方法かと思われます。
これは法務省所管の公的な機関ですので、安心してご利用できるのではないかと思われます。
以下参考までに「法テラス」の概要を記載します(法テラスのホームページより抜粋)。
【「借金」「離婚」「相続」・・・さまざまな法的トラブルを抱えてしまったとき、「だれに相談すればいいの?」、「どんな解決方法があるの?」と、わからないことも多いはず。こうした問題解決への「道案内」をするのが私たち「法テラス」の役目です。
全国の相談窓口が一つになっていないために情報にたどりつけない、経済的な理由で弁護士など法律の専門家に相談ができない、近くに専門家がいない、といったいろいろな問題があり、これまでの司法は使い勝手がよいとは言えないものでした。
そうした背景の中、刑事・民事を問わず、国民のみなさまがどこでも法的なトラブルの解決に必要な情報やサービスの提供を受けられるようにしようという構想のもと、総合法律支援法に基づき、平成18年4月10日に設立された法務省所管の公的な法人。それが、日本司法支援センター(愛称:法テラス)です。
お問い合わせの内容に合わせて、解決に役立つ法制度や地方公共団体、弁護士会、司法書士会、消費者団体などの関係機関の相談窓口を法テラス・サポートダイヤルや全国の法テラス地方事務所にて、無料でご案内しています(情報提供業務)。
また、経済的に余裕のない方が法的トラブルにあったときに、無料法律相談や必要に応じて弁護士・司法書士費用などの立替えを行っています(民事法律扶助業務)。
このほか、犯罪の被害にあわれた方などへの支援(犯罪被害者支援業務)等、総合法律支援法に定められた5つの業務を中心に、公益性の高いサービスを行っています(ほかに司法過疎対策業務、国選弁護等関連業務があります)。】
法テラスのホームページへのアクセスにつきましては、インターネットから「日本司法支援センター」ないし「法テラス」と入力すれば、そのホームページに着きます。
また、質問者様が専門家と訴える準備をしている旨を相手方に伝えることで、相手方が態度を軟化してくることも考えられますので、その旨を伝えておくのも一策かと思います。
3)法的な処置を取れるのはどれくらい真似されたケースなのか
これは、ケースバイケースで、一概に半分程度とか、○○パーセントとは云えませんが、初めにご説明したように、「著作物」と認められる個所、すなわち創作的表現と認められるのであれば、その部分が1行であっても、その利用は著作権侵害と認められる可能性があり、反対に創作性の認められない文章のみの利用であれば、それが数十行の利用であっても侵害とは認められない可能性があるということになろうかと思われます。
重要なのは、「創作性のある表現」の部分が利用されているか否かということです。