知的財産権を専門とする弁理士です。
インターネット上にアップロードされた著作物(音楽や動画等のコンテンツ)を受信する行為について、以下に分けてご説明します。
(1) 違法にアップロードされたコンテンツでなければ、私的使用の目的で録音・録画する限り、侵害とはなりません(著作権法30条1項柱書)。
そのため、違法でないストリーミング映像を私的使用の目的でダウンロードしても問題はありません。
ただし、違法でないストリーミング映像であっても、それを仕事に利用するためにダウンロードしますと「私的使用の目的」とはならず、複製権(同法21条)の侵害となります。
「(複製権)
第21条
著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。」
「(私的使用のための複製)
第30条第1項柱書
著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。」
(2) (国内・国外で)違法にアップロードされた著作物(コンテンツ)であって、その事実を知りながら、デジタル方式の「録音」又は「録画」をする行為は、例え、私的使用の目的であっても、複製権の侵害となります(同法2条1項15号、21条、30条1項3号)。
そのため、違法にアップロードされたストリーミング映像であって、違法にアップロードされた事実を知りながら、ダウンロードする場合は侵害となります。
一方、違法にアップロードされたストリーミング映像であっても、その事実を知らなければ、私的使用の目的でダウンロードする限り、侵害とはなりません。
そのため、違法にアップロードされた映像であって、その事実を知らない場合であっても、私的使用以外のの目的でダウンロードした場合には、侵害となります(同法21条)。
「(複製)
第2条第1項第15号
複製 印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい、次に掲げるものについては、それぞれ次に掲げる行為を含むものとする。」
「(私的使用のための複製)
第30条第1項第3号
著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であって、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合(は複製することができない)」
(3) また、その著作物が「有償著作物等」(CDやDVD等で販売されているコンテンツ、有料オンデマンド配信、有料ダウンロード販売されているコンテンツ等をいい、無料放送のみされているテレビ番組は該当しない)であれば、更に刑事罰が科されることになります(119条3項)。
具体的には、以下の要件を全て満たす場合には、刑事罰の対象となります。
⒧ 有償著作物等であること
そのストリーミング映像が有料である場合です。
無料であれば、刑事罰の対象とはなりません。
⑵ 著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信を受信するものであること
そのストリーミング映像が違法にアップロードされていたものである場合には、刑事罰の対象となり、適法にアップロードされていたものである場合には、対象とはなりません。
⑶ デジタル方式の録音又は録画であること
アナログで録音する場合は刑事罰の対象とはなりません。例えば、パソコンのスピーカーから再生した音楽をラジカセでアナログ録音するような場合です。
もっとも、ストリーミング映像をハードディスクにダウンロードする場合は、デジタル方式の録音・録画となりますので、この要件は満たしてしまう場合がほとんどではないかと思われます。
⑷ 自ら侵害の事実を知りながら行うこと
この「知りながら」とは、ⅰ)著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(ストリーミング映像のネット配信など)からのダウンロードであること、及びⅱ)ダウンロードするコンテンツ(ストリーミング映像など)が「有償著作物等」であること、について知りながら行うことと解されています。
以上の4つの要件を全て満たしてしまうと、刑事罰の対象となります(同法119条3項)。
「(罰則)
第119条第3項
第30条第1項に定める私的使用の目的をもつて、有償著作 物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者は、2年以下の懲役若しくは2百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」