知的財産権を専門とする弁理士です。
1.著作物性について
まず、七五三の写真が著作物に該当するかどうかについてご説明します。そもそも著作物でなければ著作者人格権及び著作権(以下「著作権等」とします)は発生しません。
著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したもの・・・」をいいます(著作権法(以下「著」とします)2条1項1号)。すべての創作物が著作物になるのではなく、制作者の思想や感情が創作的に表現されて初めて著作物となります。
写真につきましは、創作性を認めることのできない自動証明写真、プリクラ、監視カメラの写真や、写真を複製手段として使った場合、例えば、芸術作品などを忠実に再現した複製写真を除き、著作物性が認められる可能性が高いです。
七五三の写真におきましても。単に被写体であるお子さんを機械的に撮ったものではなく、構図や配置、どのようなアングルで捉えシャッターをきるか、光線の照射方法や陰影の有無や付け方をどうするかなどの写真技術によって思想または感情を創作的に表現されたものといえ、また、撮影後の現像、焼付け、などのプリント処理の段階においても技術的な創意工夫がなされているはずですので、本事案における七五三の写真は著作物となる可能性があります(著2条1項1号、10条1項8号)。
2.著作権者について
著作権等は著作者に原始的に生じます(著17条1項)。
著作者とは、著作物を創作する者をいいます(著2条1項2号)。
写真の著作物につきましては、創作者である撮影者に著作権等が生じます。
そのため、スタジオで七五三の写真を撮影したカメラマンに著作権等が生じます。撮影したカメラマンが写真店主であればその店主が著作権者となり、店主とカメラマンが異なれば実際に撮影したカメラマンが著作権者となります。
ただし、カメラマンが著作権者の場合、店主との間で、著作権の譲渡契約を結んでいる場合には、著作権は店主が有することになります(著61条)。
そして、著作権者は、著作物である写真について、使用したり、収益をあげたり、処分したりすることができます。
そのため、著作権者は、七五三の写真やそのデータを破棄することも可能となります。
3.著作権の保護期間について
著作権の保護期間は、原則として、著作者の死後50年を経過するまでの間です(著51条)。
したがいまして、例え写真やデータを破棄しても著作権自体は消滅しません。権利が消滅したのではなく、著作物を破棄したにすぎませんので、著作物の破棄によっては著作権等は消滅しません。
4.譲渡契約について
手数料を支払って写真データが記録されているCD-ROMを渡してもらうことはできます。
これは著作権の譲渡とは関係なく、すなわち、著作権の問題とは関係なく、通常の売買契約の問題ですので、写真データの所有者(店主など)から写真データの譲受の契約を結べばいいことです。
ただし、写真や写真データを譲り受けた場合、質問者様はそれらの所有権は有することになりますが、所有権と著作権等とは別個の権利ですので、たとえ、写真やCD-ROMを買い受けても著作権までは譲り受けたことにはなりませんのでご注意ください。
著作権まで欲しいのであれば、別途、著作権の譲渡契約をする必要があります。
なお、蛇足ながら付け加えますと、著作者人格権はその名のとおり「人格権」ですので、著作権法上、契約によって譲渡できるものではありません。譲渡ができるのは「著作権」です。そのため、例え著作者人格権についての譲渡契約を結んでも著作権法上は、その契約は効力を有しません。