知的財産権を専門としている弁理士です。
結論から申しますと、pdfファイルに記載されている鍛錬方法(以下「マニュアル」とします)をプリントアウトして、落札者に送る行為は、著作権のうち複製権(著作権法(以下「著」とします)21条)及び譲渡権(著26条の2第1項)の侵害になると思われます。
以下に複製権と譲渡権に分けて詳述します。
1.複製権について
著作物たるマニュアルを私的使用の目的で複製する行為には複製権は及びません(著30条)。しかし、この制限規定は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的として複製する場合には、複製権が及ばないことを意味しますので、本事案のように不特定者に譲渡するためにプリントアウトする行為は私的使用の目的を超える複製ですので、本制限規定は働きません。したがいまして、落札者にマニュアルを送るためにこれをプリントアウト(複製)する行為は複製権の侵害となります。
2.譲渡権について
譲渡権とは、著作者は、その著作物をその原作品又は複製物の譲渡により公衆に提供する権利を専有するという権利です(著26条の2第1項)。
そのため、権利者以外の者が譲渡した場合は譲渡権侵害となります。
ただし、この譲渡権は、譲渡権者又はその許諾を得た者により公衆に譲渡された著作物の原作品又は複製物を、その譲受人が譲渡する場合には、行使することができません(著26条の2第2項1号)。
この制限規定は、譲渡権者に流通をコントロールするような強大な権限を与えないようにするためであり、著作物が正規の権利者等によって譲渡(販売)された後はもはや譲渡権は消尽したものとなり、譲渡権を行使できないようにしたものです。
しかし、本制限規定は、譲渡権者やその許諾を得た者が譲渡した「原作品」又は「その複製物」に限られますので、本事案のように、質問者様が受け取ったpdfファイルの内容を質問者様が落札者に送るためにプリントアウト(複製)したものは、譲渡権者等が譲渡した原作品でも複製物でもなく、そのプリントアウトしたものは、譲渡権者等が譲渡した複製物(pdfファイル)の複製物となりますので、その複製物(プリントアウトしたもの)に関しては譲渡権は消尽しておらず、それを落札者に送る行為につき譲渡権を行使することができます。
したがいまして、プリントアウトしたものを落札者に送るのは控えた方がよろしいかと思われます。また、複製とは、著作権法上、印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいいます(著2条1項15号)。そのため、プリントアウト以外の方法により、複製したものも複製権が働きます。
また、複製物を貸与した場合には、貸与権(著26条の3)を行使される可能性があります。
そのため、どうしてもアニュアルを落札者に送りたい場合には、権利者の許諾を得る必要があります。