雇用・労働カテゴリ担当の特定社会保険労務士です。質問をご投稿いただき、誠にありがとうございます。
会社での出来事、ご心痛お察し申し上げます。
平成24年に厚生労働省がパワハラの行為類型として次のように発表しています。
(1)身体的な攻撃(暴行・傷害)
(2)精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
(3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
(4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
(5)過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
(6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
暴力はもちろんパワハラです。許されることではありません。
次の責任を問うことが可能です。
①不法行為責任
民法709条では「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定められています。職場でも故意又は過失によって、生命、身体、精神的な健康を侵害された場合には損害賠償責任を問うことができます。
②使用者責任
民法715条では「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」としています。
まず、内容証明を送るのが良いでしょう。
内容証明とは同一の文書を3通作成して、そのうち1通を相手側に送る方法です。1通は郵便局が保管してくれ文章の内容を証明してくれます。
内容証明の作成はできれば専門家に依頼したほうが良いでしょう。専門家に内容証明を作成してもらえば、相手側にプレッシャーを与える効果が期待できます。特に専門家の中でも弁護士は強力です。
内容証明の送付で解決しなけば次の労働局のあっせんと労働審判の方法があります。
●労働局のあっせん
労働局の紛争調整委員会による「あっせん」とは、相対立する個々の労働者と使用者との間に弁護士、大学教授などの学識経験者である第三者が入り、当事者双方の事情を聴取、整理、相互の誤解を解くなどして、当事者双方の話し合いによる紛争の解決を目指す制度です。
参考までに東京労働局のホームページを紹介させていただきます。
http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/hourei_seido_tetsuzuki/kobetsu_roudou_funsou/_84171/roudou-soudan/3.html
労働局は各都道府県に必ず1つあります。
●あっせんのメリット
①非公開
②手続きが裁判ほど難しくない
②迅速な解決が期待できる
③本人が手続きすれば無料(特定社会保険労務士に代理を依頼すれば費用発生)
●あっせんのデメリット
①強制力がない(相手側があっせんの参加を拒否したり、参加しても和解案に応じる義務がない)
●労働審判とは
労働審判官1名(裁判官)と労働審判員2名(民間の労使の専門家)で構成される労働審判委員会が個別労働紛争を審理して調停による解決を目指します。原則、3回以内の期日で審理は終了します。調停が成立しなかった場合は審判が出されます。
審判が出ても紛争の当事者が納得出来ず、異議の申立てがあれば通常の裁判に移行します。
労働審判の申立ては地方裁判所にします。
裁判所のホームページ
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_minzi/minzi_02_03/index.html
●労働審判のメリット
①裁判に比べると迅速な解決が期待できる
②事案の実情に即した柔軟な解決が期待できる
●労働審判のデメリット
①通常の裁判に移行すると二度手間となる
②弁護士に代理を依頼すれば費用が発生
●あっせん→労働審判
あっせん不成立の場合、労働審判又は裁判に進むことができます。最初から労働審判又は裁判をすることもできます。
残業代も請求できます。残業代についてはまず労働基準監督署に賃金未払いの労働基準法違反で申告するのが良いでしょう。