>突然、自宅待機業務を任命され、「弁護士と相談をしながら、質問書を作成するから
当分自宅待機、と命ぜられた。程なく1回目の質問書が届いた。
→懲戒処分を決定するに先立ち、処分に該当する行為があったかどうかを調査したり、手続き上懲戒委員会で審議を必要とする場合、一定期間就労を禁止する場合があります(自宅待機・自宅謹慎)。
ア 自宅で謹慎や待機することが労働者の提供する労働義務となっている場合と、
イ 使用者が労務受領を拒否する意思表示となっている場合とがあります。
一般には後者の場合が多いです。
謹慎処分の有効性
まず就業規則に規定がある場合とない場合とがあります。ある場合でも「社員に懲戒処分に該当する事由があるときには、その処分が決定するまで、出勤停止を命じることがある。」というような一般的規定によって、自宅待機命令の根拠は導き出せても、具体的な自宅待機の有効性まで肯定されるわけではありません。
ⅰ懲戒処分事由がないことが明らかな場合は、自宅謹慎命令は権利濫用として無効です。
ⅱ その期間は、不当に長期にわたる場合は、懲戒処分を行ったと同様になるので、調査や審議に必要な相当な期間に限定する必要があります。それを超える場合は、権利濫用として不法行為に該当します。
ⅲ 自宅謹慎を行うだけの合理的理由が必要で、それがない場合は、やはり命令は無効です。
自宅謹慎中の賃金
アの場合、自宅で待機していれば、それが債務の履行になっているので、使用者の賃金支払義務は消滅しません。
イの場合、ⅰ 自宅謹慎を正当とする理由がある場合は、
使用者の責めに帰すべき事由による労務の履行不能ではないので、使用者の賃金支払義務は生じません(民536条2項)
ⅱ 自宅謹慎を正当とする理由がない場合は、
使用者の責めに帰すべき事由による労務の履行不能となり、賃金支払義務が生じます。
アであることを明示しない限り、一般にイが多いことは上述のとおりです。
本当は、質問書など答える義務はありません。むこうが証明責任を負います。何を悠長に調査しているのでしょう。
「賃金支払義務についてどう考えるのか?」「自宅謹慎命令の法文上の根拠を示せ。」「自宅謹慎命令の有効性を示せ。」と逆問してやりましょう。
※雇用・労働の専門家たる社労士としての回答です(社労士法第2条1項3号 相談・指導)。具体的訴訟事件につき一方当事者に有利な法解釈の当否を論ずるものに非ず。
企業側の労働社会保険手続き代行のみならず、従業員側の個別労働関係民事紛争の相談・解決にも積極的に応じています。