御相談頂きまして誠に感謝しております。
文面内容を拝見しますと、御社ではこれまで処遇を巡る大きなトラブルも無く比較的労使関係も良好であったものとお見受けいたします。
そこで、そうした関係を生かして以下のように全従業員を対象として説明されるとよいでしょう。
・会社では、残業が発生している事も考慮した上で、比較的高い年俸額を提示・支給してきました。
・しかしながら、実際には残業支払対象とならない裁量労働制・事業場外みなし労働制・管理監督職として勤務する従業員と、それ以外の一般従業員とが混在しています。
・そこでこの度、会社としてのコンプライアンス姿勢を確立し、各従業員一人一人のポジションも明確にする為に、それぞれの職務内容に応じて4つのカテゴリーに区分することにしました。
・今回の区分によって、従業員の皆さんの処遇内容は基本的に変わりませんので安心してください。つまり、減給とか、勤務時間が新たに増えるといった不利益はございません。
(以下、各カテゴリー毎に労働時間制度、残業支払の有無及び改めて処遇自体の変更が無い旨の説明を実施。その後、質疑応答も行う。)
上記内容にもございますように、減給等の不利益を発生させないことが最重要です。細かい制度内容よりも従業員が気になるのはまさにこの点だからです。
但し、処遇自体が変わりなくとも、固定残業代の導入等により残業部分も含めて現行給与維持となりますと、基本給部分が減る分不利益変更に当たりますので、原則従業員の個別同意を採られることが必要になります。
そして、説明の際は会社からの決定事項としまして一方的に押し切るといった方法ではなく、従業員から意見が出れば真摯に耳を傾け、場合によっては多少の処遇改善等も柔軟に検討されるべきといえます。
そうした点に注意すれば、労働契約法第10条 にも「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。」とございますように、全員の個別同意が得られなくとも新しい制度内容が有効とされる可能性は高くなります。
最終的には、やはり制度内容の細かい説明よりも、会社が従業員をどれほど大切に思っているかといった姿勢を示す事がスムーズな制度導入のカギを握るものといえます。