>しかし、703条に記載されています、「法律上の原因なくして」ということは、
逆に法律上の原因があれば、不当ではなく正当な利得ということになりますよね。
管理会社側の言う、「受益者加入金は一時金だから返金しない」という主張は、どのような法律上の原因に基づいて主張しているのでしょうか。
→利得が法律上の規定によって生ずる場合もあります。たとえば、取得時効によって他人の所有権その他の権利を取得した場合、善意の占有者が果実を取得した場合、利得が不当利得となるか否かは、利得を生ぜしめた法律の理由ないし目的によって決せられます。
ここで、時効取得の場合は、永続した事実状態を尊重してこれを法律関係に高め、それによって社会の秩序を維持するところに時効制度の目的がある以上、その取得は究極的でなければならないとされ、不当利得は否定されます。
また善意占有者の果実取得の場合は、善意の占有者保護のため、元物から生ずる収益を終局的に帰属させる趣旨で規定されたものであるから、利得の返還を認めたのではその趣旨が没却されるとして、不当利得は否定されます。
ここで「法律上の原因なくして」という要件をどのように解すべきかですが、不当利得制度の趣旨は、取引によって生ずる財産的価値の移動が一般的・形式的には正当なものであるとみられるにもかかわらず、その価値の移動の当事者間に視点を置いて考えるならば、公平に反し正当なものということができない場合に救済を図る制度です。
そうであれば、「法律上の原因なくして」とは、公平の理念からみて、財産的価値の移動をその当事者間において正当なものとするだけの実質的・相対的な理由がない、という意味に解すべきです。
本件も、質問者様がみてみたような理由をふまえて考えると、なぜ、利得させなけばならないのか、本件ではその利得を正当なものとするだけの実質的・相対的理由を欠くのではないか、という疑問が生じます。
>礼金、加入金、権利金(呼び方はいろいろあります)は一時金であり、返金しなくとも良いという法律的な根拠は、契約による双方合意であると考えていましたが、間違っていますでしょうか。(つまり契約者双方が、礼金等は一時金であり返金しないことに納得し合意した場合という意味です)
→たとえば、敷金の交付は、一種の停止条件(法律行為の効力の発生を将来の不確定な事実の成否にかからしめる附款)付返還債務を伴う金銭所有権の移転です。
すなわち、敷金とは、不動産の賃貸借契約の締結に際し、賃借人の賃料債務その他の債務を担保する目的で、賃借人から賃貸人に交付される金銭であって、契約終了の際に、賃借人の債務不履行があれば当然その額が減額され、債務不履行がなければ全額賃借人に返還されるものをいいます。ーこの場合は敷金の定義そのものから返還義務が導かれます。
保証金の法的性質は、一義的に決められるものではなく、基本的には授受した当事者間の意思によって決せられます。
一般的には、賃借人の債務を担保するために交付され、契約終了時には返還が予定されているものが多く、この場合には、法的性質は敷金と異 なりません。
しかし、契約上、保証金の一部について「償却」の名目で返還を要しないと規定することも多く、その部分については、賃借権の設定の対価としての性格(権利金ないし礼金)としての性質を有します。ーこの場合は当事者間の書面での合意(契約)に基づくこともありますが、事実上の慣習によるとみられる場合もあります。
★民事法務・契約法務の専門家たる行政書士としての回答です(行政書士法第1条の3第3号 法定外業務 法規相談)。具体的訴訟事件につき一方当事者に有利な法解釈の当否を論ずるものに非ず。