こんばんは。
ご無沙汰いたしております。ご返事が遅れまして申し訳ございませんでした。
大切な猫ちゃんを亡くされたのは大変残念ですが、今はお心も落ち着いてこられた様子で安心しました。
猫ちゃんはもともと腎臓に結石があったということですね。泌尿器系は腎臓→尿管→膀胱→尿道→おしっこ、という順番で繋がっています。今回の場合やはり腎臓の石が下に降りてきて尿管に詰まったために急に腎不全になったのではないかと思います。人でも腎結石が急に尿管に詰まることはありますし、その場合相当に痛いらしいです。腎臓に石がある場合は常にこのリスクがありますので、あらかじめ分かっていたのであれば先生も腎臓やその周辺をエコー検査にて確認するべきだったと思います。
また高齢の猫(7歳以上は高齢です。)の場合、腎不全の原因は、今回のような閉塞以外にも腫瘍や腎臓の萎縮、糸球体腎炎などの免疫異常など原因が様々なので、やはり最初にしっかり検査をして治療方針を立てることが、間違いのない治療になると思います。具合の悪い猫ちゃんをいろいろ検査してさらに具合が悪くなるとよくないですから、腎不全の程度にもよりますが、入院して治療しながら少しずつ検査をされるのが一番よろしいかと思います。
腎結石は血尿の原因になり得ると思います。また腎結石はその石に細菌が付着するので慢性の感染症になる可能性があります。しかし実際には治療を抗生剤でしても石自体が無くならないのでそこに付着している細菌をやっつけることは非常に困難です。その場合はやはり定期的に尿検査をして血尿や細菌が尿にでていないかを調べることが必要だと思います。またそのような石はシュウ酸カルシウムのことが多いので、食事療法やサプリメントの服用をすることも普段の維持管理としては方法の1つだと思います。
本来は獣医師は知識や経験、検査結果をもとに飼い主様に猫ちゃんの今の状態や今後どうなるか、治療方針はどうするか、を提示して導く役割を期待されますが、今回は残念ながら最初の段階での治療方針が結果的には正しいとは言えませんでした。できれば途中で尿管結石による尿管閉塞に気づくことができれば、治療方針の修正ができたかもしれません。
物事すべてに当てはまることですが、まず検査して治療方針を立てる、その後再評価して治療が正しいかを確かめる、予想と異なる結果が出た場合は再度検査して新しい治療方針を決める、という作業を繰り返しすることが重要なのではないかと思います。
ただし先生はご自身の全力で治療をされたのは間違いないと思います。申し訳ございませんが治療内容についてはどの治療が正しくてどの治療が間違っているなどとは言えませんし、そのような立場でもございませんので、コメントできかねます。
一般の飼い主様が猫ちゃんの かかりそうな病気をすべて理解することは困難です。しかし普段の生活の中で猫ちゃんの異変に気づかれるのはやはり飼い主様以外いませんので、体調管理(便の状態、尿の状態や回数、食欲、食事の種類、体重の増減、普段から体をよく触っておく、熱がないか耳を触ってみるなど)が飼い主様として求められるものではないかと思います。そして異常を感じたら病院に連れていかれて必要ならば検査をされることになると思います。また高齢の猫の場合年1-2回、検診をされて異常が無いか調べることも有効だと思います。しかし今回のように急に石が尿管に詰まる場合は症状が常に急にでますので、なかなか初期の段階で見つけることは難しいと思います。恐らく最初の症状は元気なしで食欲低下位しか症状が出ないと思います。その段階で病気の種類を特定することは検査してみないと分からないと思います。しかしその病気を見つけるのは獣医師の役割なので、その辺りまで飼い主様が勉強されるとなると大変なことになると思います。
最後にクレアチニンについてですが、検査機器の会社によって猫の参考基準値がことなるために数値の上限が異なります。しかし一般的に猫のクレアチニンは通常1以下ですので、1以上が複数回検出された場合は機器の種類に関わらず初期の腎臓病を疑うことが必要です。その場合尿比重含めた尿検査をすることが求められます。
国際的な取り決めではクレアチニン1.6以上で初期の腎臓病の可能性ありとされます。これはどんな検査機器であっても1.6以上は正常とは言えないことを意味します。
さらに、血液検査でクレアチニンが2以上になった場合すでに腎臓の機能の75%は失われているということが分かっています。つまり血液検査におけるクレアチニンの数値は非常に鈍い検査項目なので、この数値に異常が無いからと言って腎臓病を否定することは全くできないのです。腎臓の検査の場合は必ず尿検査にて尿比重を測定することが求められます。つまり腎臓病のモニタリングは血液検査ではなく尿検査ですることが今のところ一番感度の高い検査と言えます。
ですので定期検診のときは、できれば血液検査と尿検査をセットでされることをお勧め致します。
検査というものはすべて完全な検査などはなく、必ず検出限界というものがありますので、血液検査で異常が無い場合は、猫ちゃんに異常がないのではなく、血液検査に関する限り異常がみとめられませんでした、という結論になります。従って複数の検査をすることでそれぞれの検 査の欠点を補うということがより正確な猫ちゃんの状態把握につながることになります。しかしすべての検査をすると費用や猫ちゃんの負担になりますので定期的に費用の許す範囲内で年齢に応じていろいろな検査を順番にされることがよろしいのではないかと思います。その検査結果に基づいて予防措置をされていかれるとよろしいのではないでしょうか。
このあたりは人の定期検診と同じ考え方だと思います。
2匹の猫ちゃんが飼い主様共々今後も健康に過ごせますようにお祈りしております。
またご不明の点がございましたら答えさせていただきますので宜しくお願い申し上げます。
お大事にして下さい。