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猫山司
猫山司, メディカルアドバイザー
カテゴリ: 精神科
満足したユーザー: 14145
経験:  医師。国立大学医学部卒業後、臨床と研究に10数年間従事
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大学の研究室(国公立の化学系)で技術員をやっています。 研究室の学生で昨年11月からうつ病を発症し2月まで登校

質問者の質問

大学の研究室(国公立の化学系)で技術員をやっています。

研究室の学生で昨年11月からうつ病を発症し2月まで登校できなかった子がいます。
発症当時4年生で現在M1の一人暮らしの男子学生です。
その後、徐々にこれるようになり、4月からは実験に復帰して授業にも出るようになったのですが、
1ヶ月前から急に登校しなくなりました。

投薬状況は朝にジェイゾロフト50mg、デパス0.5mg、就寝前にマイスリー10mgを11月から3月まで。
3月に「4月に 完全復帰したい」とのことで主治医に頼んでSNRIを追加したそうです。
登校しなくなる2週間前からSNRIを断薬していて「ちょっと体調が悪い」と言っていました。
もともと6月から減薬する予定だと聞いています。

登校しなくなる直後に「いまはただ一人になりたい」というメールが来て、
その後連絡が取れなくなり、非常に心配していたのですが、
数日前に「学校辞めます。公務員試験またはコネ会社に就職します。公務員試験の追い込みで忙しいので連絡しないでください」というメールをもらいました。
ちゃんと薬は飲んでいるのかきいたところ「ゾロフトは0です、こっちも追い込みです」といわれました。

このような状態で減薬でジェイゾロフトを投与しない処方はありなのでしょうか?
登校しなくなる5月までは50mgを毎日摂取していたはずです。
減薬をはじめたとしても、1ヶ月で完全にSSRIを切るのは精神科の投薬として標準なのですか?

また、うつ病が完治していないときに退学などの大きな決断はしないほうがいいと思うのです。
彼を思いとどまらせるにはどうしたらいいでしょう?
効果的な説得方法があったら教えてください。
投稿: 4 年 前.
カテゴリ: 精神科
専門家:  猫山司 返答済み 4 年 前.
こんばんは。猫山と申します。精神科医です。

まず、日本のうつ病患者のうち、適切な薬物療法を受けているのは25%に過ぎないという事実をあらかじめご理解ください。

【うつ病:適切な治療を受けているのは1/4(2006年 日本うつ病学会調べ)】

次に、「標準」についてですが、うつ病の薬物療法の基本にして王道は、1つの抗うつ薬による単剤治療です。1つの抗うつ薬を最大耐用量か最大承認用量まで増量し、十分期間(4~6週間) をかけて有効性を評価し、もしも効果が無いようならその抗うつ薬を止め、その抗うつ薬とは異なる効き方をする別の抗うつ薬を十分用量・十分期間試みる…… というやり方で、それぞれの患者様と「相性」のよい抗うつ薬をみつけるべきなのです。

つまり、ご記載の中だけでも、その男子学生の主治医は2つの間違いを犯していることになります。

1つはジェイゾロフトは100mg/日まで用いることができる抗うつ薬であるにも関わらず、最小有効量の50mg/日までしか使用せず、なのに「4月に完全復帰したい」とのことでSNRIを追加したことです。単純にジェイゾロフトを100mg/日まで増量すべきでした。中途半端な量のSSRIと(恐らくは)中途半端な量のSNRIの併用では、どちらも十分に効果を発揮していなかった可能性が高いと思われます。

もう1つは、「このような状態で減薬でジェイゾロフトを投与しない処方」を行っていることです。代わりに他の抗うつ薬を用いているのだとしても、ジェイゾロフトを最大量まで試さずに他剤に切り替えるのは良策ではありませんし(結局この患者様にジェイゾロフトが有効なのかどうかわからないままになってしまいます)、本当に完全に抗うつ薬を中止しているのであれば、それは事実上の治療放棄です。
「うつは心の風邪」というキャッチフレーズで患者様に受診を促すような啓蒙活動がかつて行われましたが、うつ病に関しては慢性疾患であり、症状が寛解した後も維持療法、具体的には抗うつ薬の服用を継続すべし、というのが最近の治療論の主流になっています。
寛解(症状が無くなって一定以上の期間が続くこと)する前に抗うつ薬治療を中止するなど、問題外であると言えます。

減薬のペースは、個々の患者様によって離脱症状の出方は異なりますからあまり問題ではありません。治っていないのに減薬・中止していることが問題なのです。

「うつ病が完治していないときに退学などの大きな決断はしないほうがいい」のはその通りですが、効果的な説得方法については回答しかねます。
ご本人の病状やお人柄、相談者様との関係を存じ上げないわれわれに、ぽんと、これこれこのように説得すれば退学を思いとどまらせることができますよ、という助言がで きるわけもありません。
それは本来はご本人と、もしご本人に本来の判断能力が無いのであれば、ご家族が責任をもって下さなければならない決断です。

全般的な印象としては、かかった医者の腕も悪かったのでしょうが、この患者様の考え方も、うつ病の病状だけでは説明しきれない偏りがあるように思えるのですが……
少なくとも、この患者様が受けられてきた薬物療法が世界標準から大きく外れた、端にも棒にもかからないものだったことは間違いありません。

以上、ご参考になれば幸いです。
質問者: 返答済み 4 年 前.

ご回答ありがとうございました。

 

参考にさせていただきます。

彼の指導教官と相談してご両親と連絡をとり、

彼と病気と向き合ってもらう方向に進めようと思っています。

ご両親にはうつ病になって大学に通えなかったことなどは話していないそうです。

 

彼が休み始めた日の朝に何かとてもショックなことがあったようです。

その後、1~2週間かけて一人で考えてだした結論のようなので、

正常な判断力がなかったのだと考えています。

その状態で「学校を辞めればいい」という考えに固執してしまったのでしょう。

 

彼は誠実でまじめ、非常に論理的でちょっと頑固、

とても一本気で他人に気を使える優しい子です。

いつも研究室の仲間に気を配って雑用を引き受けたり、

後輩の面倒をよくみたりと、コミュニケーションは良好でした。

視野が狭くなりがちで、ちょっと融通が利かないのが玉にキズな性格です。

 

私は彼にとって「一番身近な大人で何でも相談できるお姉さん」のような関係です。

34歳で社会人経験のある技術員というポジションです。

また、彼の友人たちとも仲良よく、毎日おしゃべりしたり、ご飯にいったり、一緒に帰ったり、

友人ぐるみで付き合っています。

彼のもっとも仲のよい友人も突然「学校を辞める」というのを言われて戸惑っています。

 

また、私もかつてうつ病になった経験があり、

2007年から2008年の1年6ヶ月間を休職後に復職、

寛解して昨年から大学に勤務してます。

ジェイゾロフトを現在でも使っていることもあり

薬の話や病状についてフランクに話し合っていました。

 

追加で質問させてください。

彼は11月から2月までははっきりと症状が出ていました。

3月末までは登校は出来るけれど、通常業務(大学生としての研究)はできない状態でした。

3~4ヶ月症状があった場合、維持療法はどれくらいの期間行われるものですか?

個人によって投薬状況は変わると思うのですが、

標準的なところを教えていただけると幸いです。

 

4月からは実験にも復帰していたのですが、

朝起きられなく1限はほとんど出席できず、

どうもそのこと(朝起きれず授業に出ていないなど)は主治医に報告していないようです。

4月あたりから通院は月に1回になり、

「もうだいぶ治った、調子がいい」と私や周りにも言っていました。

そのあたりも問題なのでしょうね。

 

休みだした直後に指導教官が「せめてサンプルの保管場所は教えてくれ」

といったそうですが、それに対しても返信がないそうです。

彼は「授業はもともとよくサボっていた。もう学校はやめるからどうでもいい」と言います。

彼のこのような状態は病気によって起こるものですか?

責任感の強い彼が「どうでもいい」といって、引継ぎを行わないのはうつの症状が強く出ているからだと思うのですが、そう考えてよいでしょうか?

 

このような場合には自殺の可能性はありますか?

個人的には、今がんばっている試験や就職に失敗したらとても危険だと思っています。

この考えを彼の指導教官やご両親に相談するのは過剰な心配でしょうか?

 

大変申し訳ありませんが、教えていただけたら幸いです。

よろしくお願いいたします。

 

 

 

 

専門家:  猫山司 返答済み 4 年 前.
おはようございます。

ご質問の点、回答させていただきます。

> 3~4ヶ月症状があった場合、維持療法はどれくらいの期間行われるものですか?
教科書的には、「症状があった期間に関わらず一生」というのが最近の趨勢です。
既にうつ病は再発率の高い慢性疾患として認識されつつあるからです。
ただ、うつ病と一括りにはなっていますが、実際にはいくつかの病気が入り混じった不均質な集団だと考えられており、私論としては「維持療法が一生必要な人もいれば、一定期間でよい人もいる」と思っております。
よって私は、初発の方は、ご本人が望まれた場合には一度治療を終結します。感覚としては再発される方とされない方が半々くらいです。
それでも、半年間は維持療法を続けますし、いくつかのガイドラインや論文がやはり最低6か月程度の維持療法を支持しています。

【うつ病の再燃と再発-予防法の実際-】
http://www.fuanclinic.com/byouki/a_21.htm

> 「もうだいぶ治った、調子がいい」と私や周りにも言っていました。

> そのあたりも問題なのでしょうね。

問題ですね。

心の風邪、のイメージで、主治医、ご本人ともに治療を行っていた印象を受けます。

 

> 彼のこのような状態は病気によって起こるものですか?

第一義的にはうつ病の症状だと考えてよいと思います。

統合失調症のように不可逆的な性格変化が起こる病気ではありませんので、これは後の自殺念慮にもつながる厭世観による投げやりな態度だと考えます。

自分が周囲に置いていかれてしまった、という感覚があって世を拗ねている、という可能性もありますが。

 

> このような場合には自殺の可能性はありますか?

> 個人的には、今がんばっている試験や就職に失敗したらとても危険だと思っています。

上述のように世をはかなんで、もうどうでもいと思っているのであれば、それは自殺のサインとみなしていいと思います。

私の推論ですが、公務員試験の勉強は、していないか、やろうとしても進んでいないと思いますよ。

病識(自分が病気だという認識)が無く、疾病否認も強い方のようですから、「大学にはいけないけれど自分は他の道でちゃんとやれている」というポーズのようなものではないかと愚考いたします。

しかし勉強は出来ていないわけですから、これは自己嫌悪と病状悪化の悪循環につながりかねません。

ご記載の情報を拝読しただけではありますが、相談者様が積極的に関わろうとするのであれば、この患者様に影響を及ぼしうる人々、時にご両親(医療保護入院を行う場合、ご両親の同意が必要になります)を巻き込んで事に当たる必要があると考えます。

 

以上、ご参考になれば幸いです。

 

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