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patent777
patent777, 弁理士
カテゴリ: 特許・商標・著作権
満足したユーザー: 417
経験:  特に特許法、実用新案法、意匠法、商標法、パリ条約に精通しています。
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初めて質問させていただきます。あるオンラインマーケットにて、コンピュータソフトウェアの開発を受注しました。そのオンラ

解決済みの質問:

初めて質問させていただきます。あるオンラインマーケットにて、コンピュータソフトウェアの開発を受注しました。そのオンラインマーケットサイトでは様々な分野のスキルの売り買いがされており、私は売る側で、発注者(Aさん)より上記の依頼を受けました。やりとりはサイトを通じて匿名で行われます。もともと私が提供しているサービスはごく小規模なプログラムの修正等で、価格も500円と安価なものです。オンラインマーケットじたい、価格が500円を基本とするもので、依頼者が自由意思で10万円を上限に追加料金を支払えるシステムです。そこで受けた依頼はExcelで作成されたあるシステムをAccessで作り直すというものでした。私はこの案件を引き受けたのですが、当初の予想を超えて膨大な工数がかかっています(約3か月)。サイトの規約では依頼をキャンセルすることはできるのですが、引き受けた以上はサービスを提供したいと考えております。Aさんが個人的にシステムを使うのであれば不満はないのですが、AさんはこのシステムをAさんの顧客へ配布することを考えているようです(有料か無料かは不明)。著作者である自分は、Aさんがシステムを配布することに関してなんらかの制約を課すことはできるのでしょうか。この案件についてAさんとの具体的な契約書はありません。どこへ相談すればよいか分からず、ここへたどりつきました。何卒よろしくお願いいたします。
投稿: 1 年 前.
カテゴリ: 特許・商標・著作権
専門家:  patent777 返答済み 1 年 前.
patent777 :

知的財産権を専門とする者です。

patent777 :

結論から申しますと、質問者様は、Aさんに対しプログラムの配布を差し止めることができます。

patent777 :

以下に、その理由をご説明しますが、簡潔にまとめてからご説明しますので、もう少しお待ちください。

Customer:

早速のご返答ありがとうございます。

Customer:

承知いたしました。お待ちしております。

patent777 :

まず、著作権は著作者に「原始的に」生じます。

本事案のようにオンラインマーケットで依頼を受けてプログラムを作成した場合であっても、料金の支払いの有無に関係なく、実際に創作した受注者である質問者様に著作権等が原始的に発生します。

もし、著作権の譲渡契約があったならば原始的に帰属した著作権を、その後に発注者Aさんに譲渡しなければなりませんが、そのような契約がないようですので著作権等は質問者様に帰属しています。

ここで少し問題となってくるのが、プログラムをExcelからAccessへ作り直しているという点です。

何もないところからプログラムを質問者様が作成しているのとは違い、既にあるプログラムを改変していますので、著作権法上の「翻案」に該当する可能性があります。

翻案とは、自分より先に創作したプログラム(本事案ではExcel―「原著作物」)に修正増減を施し、新たに創作性のある表現を付加しても、後に創作したプログラム(本事案ではAccess)が、先に創作したプログラムに依拠し、かつ、原著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる場合をいいます。そして、そのように翻案されたのであれば、後のプログラムは二次的著作物となります。

すこし、ややこしい表現で理解し難いかもしれませんが、大雑把に言いますと、複製といえるほどには原著作物と近似していないが、全く別の著作物ともいえない著作物。あるいは、複製といえるほどではないが、それでもなお、二次的著作物から原著作物を直接想起させるほどに似ているといったようなものです。

実際には、どのような行為が翻案に該当するかは、著作物の種類や表現態様などによって異なり、確定的な基準は存在せず、ケース・バイ・ケースで判断せざるをえません。

プログラムについていえば、あるプログラム言語で表わされたプログラムを他のコンピュータ言語に変更する場合、プログラムのバージョンアップなどは翻訳、翻案とされ可能性が高いといわれています。本事案については、ExcelからAccessへの変更ということですので、翻案と認定される可能性もあると思われます。

なお、後のプログラムが、先のプログラムを翻案して作成された二次的著作物に該当する場合には、二次的著作物の著作者(著2条1項2号)も、その二次的著作物について著作権等を有します。

もし、Accessで作成したプログラムがExcelで作成したプログラムを翻案したものということになれば、Excelプログラムが原著作物となり、Accessプログラムは二次的著作物という関係になります。

すなわち、Excelプログラムの著作権とAccessプログラムの著作権の2つの著作権が生じていることになります。

そうしますと、原著作物であるExcelプログラムの著作権者(「甲」とします)も、二次的著作物(Accessプログラム)の利用に関し、二次的著作物の著作者(質問者様、以下「乙」とします)が有するものと同一の種類の権利を専有することになります(著作権法28条)。

そのため、質問者様がAccessプログラムを利用する場合には、個人的に利用する場合を除いて、原著作物(Excelプログラム)の著作者甲の承諾が必要となってきます。

一方、甲が原著作物(Excelプログラム)を利用する場合は、自由ですが、甲が二次的著作物(Accessプログラム)を利用する場合も、乙の承諾が必要になります。

そのため、仮に、AccessプログラムがExcelプログラムを翻案した二次的著作物であったとしても、Aが質問者様の承諾を得ずに無段で、Accessプログラムを利用することはできないということになります(もちろん、AccessプログラムがExcelプログラムの翻案ではなく、二次的著作物でない場合は、当然に、Aさんは、質問者様の承諾が必要になります)。

Aが質問者様の承諾を得ずに利用できるのは、私的使用の目的の場合です(同法30条)が、第三者への譲渡を目的として、複製したり、複製物を譲渡することは、私的使用の目的といえませんので、著作権の侵害となります。

また、プログラムの著作権については、以下の制限規定も存在します。

「プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において、当該著作物の複製又は翻案(これにより創作した二次的著作物の複製を含む。)をすることができる。・・・。」(著作権法47条の3第1項)。

本規定は、プログラムをコンピュータで使用するには、インストールし(複製)、バックアップを取り(複製)、異機種に移植するために変更し(翻案)、バグを取り除く(翻案)等の作業が必然的に伴いますが、これらにつき個々に権利者の許諾を必要とすると、プログラムの利用・流通に大きな支障となり、権利者の利益にもならないため、複製物の所有者は、コンピュータにおいて利用するために必要と認められる限度で複製・翻案ができるとするものです。

所有者が他人にプログラムを利用させる場合は自ら電子計算機において利用するためとはならず、また、「必要と認められる限度」は判例によって定まるものですが、一般的には、複数のコンピュータで同時に使用するためのコピーや市販のゲームソフトのバックアップコピーは「必要と認められる限度」を超えており、著作権の行使は制限されないといわれています。

以上のことを踏まえて本事案について考えてみますと、Aさんが顧客へAccessプログラムを配布する目的で、複製等する行為は、著作権の制限規定は適用されませんので、質問者様の著作権を侵害することとなります。

そのため、質問者様は、Aさんが、Accessプログラムを顧客へ配布することを目的として、複製する行為を差し止めることができます。

なお、質問者様が作成したAさんに正規に譲渡したAccessプログラムを、Aさんがコピーせずに顧客に譲渡(有償、無償を問わず)する場合には、著作権を侵害することにはなりません。

正規に購入した著作物であるAccessプログラムを再度、譲渡する場合には、譲渡権は制限されるという規定が存在します(同法26条の2第2項各号)。

これは、いわゆる消尽論といいまして、一度正規に購入した著作物に対しては、著作権者はすでに対価を得ており、その時点で著作権は消尽したので、同一物を再度譲渡する行為に対して再び著作権(譲渡権26条の2第2項)を行使することは許されないという理由によるものです。

そのため、質問者様が差し止めることができるのは、AさんがAccessプログラムを「複製」して、その複製物を顧客に配布する場合ということになります。

patent777 :

以上、一通りご説明いたしました。ご不明な点等ございましたら、ご質問してください。

Customer:

大変詳しく解説いただき、ありがとうございます。かなり理解できました。このことを踏まえて二点ほどご質問したいことがあります。

Customer:

一点目はA氏が顧客へAccessプログラムを配布する目的で、複製等する行為についてです。これを著作者(私)が承諾すれば、A氏の行為は許されるというわけですね。この承諾というものと譲渡との違いが分からなくなってしまいました。また、承諾というのはたとえば配布を許可する代わりに料金を請求するなどの行為を含むものでしょうか。

Customer:

二点目はAccessで作成されたプログラムが翻案に相当するかどうかについてです。Accessプログラム(二次的著作物)は確かに、Excel(原著作物)をもとにして設計、作成を行っております。しかし、もともと原著作物の使い勝手が悪いことが作り直しの理由となっており、見た目も機能も大きく変更・拡張されています。プログラムのソースコードに関してはゼロから作成されています。

プログラムの内容は一般的な経理に関するもので、会社の入出金管理を行い、銀行口座の残高を都度確認できるようにし、資金がショートしないようにチェックするというものです。主観ではありますが、第三者から見てAccessプログラムが原著作物に対して翻案と認識される可能性は低いように思えます。しかしA氏とはAccessプログラムの仕様についてやりとりをしているため、A氏から見ればAccessプログラムは二次的著作物と考えるかもしれません。

私はコンピュータソフトやプログラムのソースコードを提供する仕事を、個人事業主として行う準備をしています。先のオンラインマーケットとは別の、自分のホームページ上で行いますが、そこで今回作成したAccessプログラムの販売を検討したいと考えておりまして、二点目の質問をさせていただきました。

以上、よろしくお願いいたします。

patent777 :

本日中に回答しますので、お待ちくださいませ。

patent777 :

まず1点目についてご説明します。



許諾というのは、いわゆるライセンスをすることです。譲渡というのは著作権を譲り渡すことをいいます。



許諾は著作権を譲り渡さないで、単にAさんに、配布する目的でAccessプログラムを複製し、それを第三者に譲渡(有償、無償を問わず)する行為を許可するということです。この場合、Aさんからロイヤリティを貰い受けることもできます。



この許諾をするにあたって、著作権は質問者様が持ったまま、Aさんにプログラムの利用を許諾するというものです。



一方、譲渡は、著作権そのものをAさんに譲り渡してしまいますので、それ以降は、質問者様がAccessプログラムを私的使用目的その他の著作権が制限される行為以外の行為をする場合には、著作権を譲り受けたAさんの許可が必要になるということです。



なお、「契約」は、書面でしなくても、口頭でした場合でも法的な効力は生じます。


しかし、後々に問題が生じる可能性を考慮しますと、契約内容をきちんと書面で交わしておいた方がよろしいかと思います。



2点目のご質問につきましては、正直に申しまして、判断が難しいです。


実際には最終的には、訴訟となった場合に、裁判所が翻案か否かを判断することになります。



判例でも、1審と2審で判断が別れたりするので、ここで断定することはできません。


先にも申しましたが、翻案か否かの判断は各事案に応じてケースバイケースでなされており、確定的な判断手法が確立されていないのが現状です。



「見た目も機能も大きく変更・拡張されています。プログラムのソースコードに関してはゼロから作成されている」とのことですので、単純な改変ではなく、そのプログラムには質問者様独自の「創作性」があるものと思われますが、A氏がAccessプログラムの仕様に関与しているという事実もあります。



また、翻案の判断に当たりましては、先の著作物(プログラム)に「依拠」して新たな著作物を作成しているか否かも判断要素となります。


本件ではAccessプログラムの作成に当たり、Excelプログラムを依拠していることには疑いがありません。



当方の立場として、危険なアドバイスができませんことご了承ください。


ここでは、安全策をとって、今回作成したAccessプログラムの販売をするに当たっては、Aさん(著作権者であれば)の許諾を得た方がよろしいかと思います。



また、クロスライセンスという形で、質問者様もAさんに無償でAccessプログラムの利用を許諾する代わりに、質問者様も無償でAさんからAccessプログラムの複製・販売の許諾を得るということも一案と思われます。


いずれにしましても、翻案の判断はこの場では難しいことをご了承ください。

Customer:

ご回答いただき、ありがとうございます。
翻案の判断の難しさについて、よく分かりました。慎重に対処したいと思います。おかげさまで今後の方針を考えるうえで大変助かりました。
感謝いたします。また何かありましたらぜひよろしくお願いいたします。

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