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patent777
patent777, 弁理士資格を取得
カテゴリ: 特許・商標・著作権
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初めて質問させていただきます。よろしくお願いいたします。 某企業の基幹業務システム(ソフトウェア)を販売してい

解決済みの質問:

初めて質問させていただきます。よろしくお願いいたします。

某企業の基幹業務システム(ソフトウェア)を販売している会社に勤務しております。
この度、私どもが販売したソフトウェアより他社の基幹システムに入れ替えが行われます。

他社の基幹システムに入れ替えにあたり、お客様よりデータ構造の開示を要求されています。
データ自体はお客様のものですので、どの様にデータを取得してもらっても良いのですがデータ構造の開示は、競合他社(納入会社)ということもあり弊社の先行きも伴うため、避けたいと考えております。
長年お世話になったお客様ですので何とかしてあげたい気持ちは多分にありますが、競合他社に提供されてしまうことが前提の要求は納得できません。

注文書、保守契約書はありますが、ソフトウェア使用許諾契約書の取り交わしを行っていないこともあり、対処方法がまったく解りません。
『要求を退けられるか解らない』ことと、要求を退けられる場合、『お客様への説明をどの様にしたら良いか』アドバイスをいただけると助かります。

宜しくお願いいたします。
投稿: 3 年 前.
カテゴリ: 特許・商標・著作権
専門家:  patent777 返答済み 3 年 前.
 知的財産権を専門とする者です。

 ご質問内容には「お客様よりデータ構造の開示を要求されています」との記載がありますが、この「データ構造」とは、某企業の基幹業務システム(以下「本件システム」とします)を構成する「プログラム」(以下「本件プログラム」とします)と解釈して以下にご説明いたします。

 もし間違った解釈をしていた場合は、お手数ですが、再度、ご指摘してください。

 まず、質問者様がどのような権利を持っているか、又は、どのような法律によって保護され得るのかについてご説明した上で、そのような権利や法律に基づいて、お客様の要求に如何に対処したらよいのかを検討したいと思います。

1.質問者様の有する権利

 質問者様は、著作物たりうる本件プログラムについて「著作権」を有しています。

 著作権法上、「プログラム」も著作権法の保護対象たる「著作物」となり得ます(著作権法(以下「著」とします)2条1項1号、10条1項9号)。

 また、著作物たるプログラムを創作した者が「原始的」に「著作者」となります(著2条1項2号)。そしてこの著作者が「原始的な」著作権者ということです。

 ここで「原始的」とは、「最初に」という意であり、著作権が生じた後に、他社にその著作権を譲渡等している場合には、著作権者は著作者から著作権の譲受人ということになります。

 ご質問内容から見る限り、譲渡等の移転はなされていないようですので、プログラムを創作(開発)した質問者様ないしは質問者様の所属されている会社(著15条2項)が著作権者であると思われます。

 質問者様が所属されている会社(以下「甲」とします)とデータ構造の開示を要求しているお客様(以下「乙」とします)の間には、保守契約書はあるが、ソフトウェア使用許諾契約書その他の契約は締結されていないようですので、著作権を乙に譲渡する旨の契約についても締結されていないので、製作者である質問者様がプログラムの著作権者ということになります(著2条1項2号)。

 ここで、著作権と所有権の違いについてご説明しますと、有体物としてのプログラム自体の所有権は、発注者である乙が有すると思われますが、著作権は、無体物としての複製権(著21条)、公衆送信権(著23条、インターネットへの掲載権など)、譲渡権(著26条の2)、貸与権(著26条の3)、翻案権(著27条。内容を改変等する権利)などが集合した権利であり、これは著作者である質問者様が有するということです(プログラムという著作物には二つの権利があるということです)。

2.いわゆる下請法による保護

 下請法につきましては、委託者(乙)と受託者(甲)が一定の関係にある場合(委託者の資本金が5,000万円超で受託者の資本金が5,000万円以下の場合、又は委託者の資本金が1,000万円超5,000万円以下の場合で受託者の資本金が1,000万円以下の場合)には、委託者が、受領拒否、下請代金の支払い遅延、下請代金の減額、不当返品、買い叩き、物の購入強制・役務の利用強制、不当な経済上の利益の提供要請などを行うことが法律上禁止されています(同法4条)。

 禁止行為に違反した場合には、公正取引委員会の調査・立ち入り(同法9条)を受ける可能性があり、また、禁止行為をやめるべきことその他必要な措置をとるべきことの勧告を受ける場合があります(同法7条)。

 以下に、下請法4条2項を提示します。

「親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあっては、第1号を除く。)に掲げる行為をすることによって、下請事業者の利益を不当に害してはならない。
1 省略。
2 省略。
3. 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
4. 下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の内容を変更させ、又は下請事業者の給付を受領した後に(役務提供委託の場合は、下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした後に)給付をやり直させること。」

 したがいまして、甲と乙の資本金が上記の条件に該当する場合には、甲は下請法によって保護されることになります。

3.お客様への説明

 あくまでも私見ですので、参考程度にとどめていただきたいのですが、本件プログラムは企業秘密であり、その開発には多大な資本、労力、期間が投下されているものであり、競合他社に無償で自社のノウハウ、技術を提供することは、投下資本を回収できず、到底応じることはできないという趣旨のことをご説明すべきかと考えます。

 これはどのような分野の企業であっても、当然のことであって、特に突飛な内容でもないので相手方も理解するはずです。

 また、所有権と著作権の違いをご説明して、所有権は乙にあるが、著作権は甲にある旨を説明してもよろしいかと思われます。

 法務の知識がないと、発注者と受注者の力関係から、当然に著作権も発注者にあると思い込んでいる場合もあります。また、そもそも所有権と著作権の違いや、プログラムに二つの権利が存在することすら理解していない場合も少なくありません(仕方のないことではあるのですが)。

 また、下請法による保護を受けられるのであれば、これも場合によっては、ご説明した方がいい場合もあります(もちろん、説明の仕方には十分留意して相手方の心証をあまり刺激しないような方法による必要があると思われますが)。

 なお、所有権と著作権の違いに関する判例として「「顔真卿自書建中告身帖(がんしんけいじしょけんちゅうこくみちょう)事件」~最判昭59.1.20 第二小法廷判決」というものがございます。

 以上につきご説明、ご提案させていただきます。
専門家:  patent777 返答済み 3 年 前.
少し説明内容を訂正させていただきます。

所有権として乙が有するのは「本件プログラム」そのものというよりは「本件プログラムが組み込まれた基幹業務システム」といった方が的確かもしれないということを付け足したいと思います。
質問者: 返答済み 3 年 前.

ご助言ありがとうございます。


概ね理解できました。


再度、一点質問させてください。


データ構造という表現があいまいで申し訳なかったのですが、正しくはデータベースに存在するテーブルのレイアウトおよび、その項目値の開示を求められています。
弊社ソフトウェアで使用するデータベースとなります。
こちらに関しましてもプログラムの開示同様に損失リスクは高くなります


当データ構造に類するものに関しましても、一般的にはプログラム同様の扱いと考えてよいものでしょうか。


不安要素を少しでも消したいため、今一度ご助言お願いいたします。


お忙しいところ恐れ入りますが宜しくお願いいたします。

専門家:  patent777 返答済み 3 年 前.
 データベースに存在するテーブルの「レイアウト」および「その項目値」が「著作物」として認められるものであれば、その「レイアウト」や「項目値」につき著作権が生じます。しかし著作物として認められるか否かは私の知る限りではグレーゾーンとしかいいようがありません。

 以下にもう少し詳しくご説明します。

 先にご説明したように、「プログラム」であれば、「著作物」となり得ます(著10条1項9号)。

 ここに「プログラム」とは、著作権法上以下のように定義されています。

 「プログラム 電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう。」(著2条1項10号の2)

 この定義に当てはめますと、「レイアウト」や「その項目値」は、電子計算機に対する指令ではないので「プログラム」とはならないことになります。
 そのため「プログラムの著作物」(著10条1項9号)には該当しないことになります。

 また、著作権法では「データベースの著作物」というものが存在します。

 データベースとは、「論文、数値、図形その他の情報の集合物であって、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。」(著2条1項10号の3)。

 データベースの著作物とは、「データベースでその情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するものは、著作物として保護する。」(著12条の2第1項。)

 「レイアウト」や「その項目値」を上記の定義に当てはめてみますと、データベースとはいえず、データベースの著作物にも該当しないと思われます。

 そうしますと、「レイアウト」や「その項目値」については、「プログラム」や「データベース」といった特定の著作物としてではなく、「著作物」の原則に当てはめて考える必要があります。

 そこで著作権法では「著作物」について以下のように定義しています。

 著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と規定しています(著2条1項1号)。

 すなわち「創作的な表現」であること、換言しますと、「表現」に「創作性」があれば「著作物」になるということです。

 「表現」を要件としていますので、単に頭の中で考えたといった「アイデア」レベルのものや、理論にすぎないものなどは「表現」したものといえず、著作物とはなりません。

 この点、少なくとも「レイアウト」については、「表現」されているといえると思われます。

 問題は「創作性」があるかないかにかかっていると思われます。

 この「創作性」は、完全な独創性までは要求されておらず、学術性や芸術性の高さも問題とはされておらず、何らかの個性が現れていればよいと解されています。
 また、他人の模倣でないことと同義とされているとか、創作性を表現の選択の幅ととらえて、それを表現しようとする場合に、そのような表現方法しかないとか、極めて限定的な表現手段しかないので誰がそれを表現しようとしても同じような表現になってしまうようなもの(季節の挨拶文、人事異動や死亡記事などの雑報、一般的な契約書のフォーマットなど)は、創作性がないことになる、などいった学説があります。

 そのため、少なくても「レイアウト」につきましては、先行する他人の模倣ではなく、その表現方法も多数あり、表現するのに高度性はなくても製作者の個性が現れているようなものであるならば、という条件付きで、そのような場合には「創作性」が認められて、著作物と判断され得るといえます。

 抽象的な回答で申し訳ありませんが、過去の判例におきましても、私の知る限りでは、本件のような「データベースに存在するテーブルのレイアウト」につき著作物性が争われた事件は存在しないと思われますので、そのような場合には、今回ご説明したように原則に基づく判断をせざるを得ないのではないかと思われます。
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