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土屋アンナ さんの舞台中止の問題点を教えてください。

解決済みの質問:

土屋アンナ さんの舞台中止の問題点を教えてください。
投稿: 3 年 前.
カテゴリ: 特許・商標・著作権
専門家:  patent777 返答済み 3 年 前.

知的財産権を専門とする弁理士です。

 

 

 ことの発端は歌手・濱田朝美さんの「日本一ヘタな歌手」を原案とした舞台「誓い奇跡のシンガー」で主演を務める予定だった土屋アンナさんが突然舞台稽古に参加しなくなった所から始まるようです。公式サイトには下記の記載があり、

 「主役の土屋アンナ氏が公的にも私的にも何らの正当な理由なく無断で舞台稽古に参加せず、8回中最初の2回のみ参加し、その後すべて不参加ということで、専らそのことが原因で同公演を開催することができなくなりました」。


 この一文だけを見ると、土屋アンナ氏に非があるように見えるますが、これに対して原作者の濱田朝美さんが、自身のブログで土屋アンナ氏は自分の気持ちを知って舞台を降りたのだと主張しました。濱田朝美さんによれば、そもそもこの舞台を原作者として明確に許可していたわけではなく、原作と舞台脚本の相違に納得がいっておらず、この事実を土屋アンナさんに話したところ、彼女は主演を降りたのではないかということです。


 どちらの主張が正しいかはわかりませんが、仮に著者の濱田朝美さんの訴えが事実だとしたならば、そもそも今回の舞台化は幾つかの問題をはらみます。


 まず、原著作物があり、これを舞台化するには著作者が保有する上演権(著作権法22条)と翻案権(同法27条、28条)に対して許可が必要となります。

 上演権とは、著作物を公に上演したり、演奏したりする権利であり、著作者は著作物を完成した時点で、この権利を保有しています。


 この上演権を濱田朝美さんが舞台監督に譲渡ないし許諾したかどうかについて、濱田朝美さんの自己紹介が舞台許可とされてしまったと述べています。


 「一年半ほど前に、私が多摩センターで路上ライブをしていた時 元担当が私の元に監督を連れて来て、"今後何か協力して下さるかもしれないから、ご挨拶して。"と言いました。 私はただ、自己紹介と今後何かありましたらよろしくお願いします。と言いました。
その事を、許可を取ったと言っているようでした。
しかし、その時は舞台化の話などは無く、その後も監督とお会いする事も、元担当からそのようなお話をされる事はありませんでした。」


 これは、客観的に考えて、自己紹介程度で、著作者の今後全ての著作物の「上演権」等の譲渡や許諾をしたとみなすような捉え方はできないと思われるものであり、両社の認識の不一致から、民法第95条、「錯誤に基づく契約」となり無効であると主張することが出来る可能性があります。

 

民法第95条(錯誤)


 「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。」


 一方で、 どうも舞台側の主張は原作ではなく、原案だとしようとしているように見えます。(パクッたのではなく、オマージュさせて頂いたのでちょっと似ているということのようです)。


 濱田朝美さんの、ブログには「原作とは内容が多少異なるため、そんなに許可と騒がなくてもいい」と言われたとあり、舞台側の告知文には「日本一ヘタな歌手を原案とした」とあります。つまり、「日本一ヘタな歌手」をリスペクトしたのでちょっと内容が似ている舞台だけど、「日本一ヘタな歌手」と全く同じっていうわけじゃないから、騒ぐことないだろうというのが、舞台主催者側の主張だということです。


 しかし、これはこれで、著作権者の有する「翻案権」を侵害している可能性があります。

 

 翻案とは、原作を利用して新たな著作物を作ることですが、舞台脚本のように原作のストーリー性や基本的モチーフを維持しつつ、他の表現形式に変えるような場合には翻案となり、翻案をするには原著作者の許諾が必要となります。

 

 また、原作を翻案して作製した脚本は二次的著作物となり、その利用(上演)をするには原著作者の許諾が必要となります(著作権法28条)。

 

 ただし、原作からヒントを得たとか着想を感じ取った程度の場合には翻案となりません。そのため、多少表現やストーリーを変更しても脚本から原著作物を直接感じ取れるようなものでしたら、翻案に該当し翻案権の侵害となります。


 舞台側が「原作」とせず「原案」(すなわち複製にも翻案にも該当せず、別の著作物)としているのは、濱田朝美さんが同意書にサインしなかったからではないかと推測されます。


 あくまでも舞台側が「原案」であると主張する場合には、濱田朝美さんの取りうる手段としては、その原案は自身の著作物の翻案であるとして翻案権と二次的著作物の利用権と氏名表示権による、原作名、著作名の表記削除ではないかと思われます。

 これを主張すれば著作権者の同意無しに「まるで原作者の許可を得た原作物の舞台化であるようなプロモーション」は行えなくなると思われます。


 問題の本質としましては、メディアの世界とは「夢」を売る世界でありますが、印税や契約等、経験の浅い著者の弱みに付け込んで契約を結ばされるケースが少なくないのではないかと思われるところと考えます。


 

patent777, 弁理士
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