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カテゴリ: 特許・商標・著作権
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小説家「立原正秋」著の「冬の形見に」の文章の一部にメロディーをつけて 合唱曲として演奏会にて演奏する計画があります

解決済みの質問:

小説家「立原正秋」著の「冬の形見に」の文章の一部にメロディーをつけて
合唱曲として演奏会にて演奏する計画があります。
メロディーはメンバーの一人が考えたもので、合唱団のオリジナルです。
この場合、著者の文章に帰属する著作権はこの合唱曲にも生きてくるものでしょうか。
著作権がある場合、著作権料を支払う必要が出てくるものでしょうか。
演奏会が有料であるか無料であるか、演奏がプロであるかアマチュアであるか
などにより著作権料に差異はでてくるものですか?
投稿: 5 年 前.
カテゴリ: 特許・商標・著作権
専門家:  patent777 返答済み 5 年 前.

知的財産権を専門としている弁理士です。

 

合唱曲の歌詞の部分については著作権が発生します。

 

小説は言語の著作物及びそれにメロディーを付けて楽曲とした場合は、その歌詞の部分が音楽の著作物に該当します(著作権法(以下「著」とします)2条1項1号、10条1項1号、同2号)。そのため、例え著作物たる「冬の形見に」の文章の一部であっても、著作権者の許諾を得ずにそれを利用した場合は著作権侵害となります。

 

本事案でいいますと、合唱曲を演奏すると演奏権(著22条)と、また、歌詞を複製すると複製権(著21条)と抵触することになります。

 

なお、原則として著作者の死後50年を経過している場合には、著作権の保護期間が切れます(著51条2項)が、立原正秋氏の死後50年は経過していないようですので、未だ著作権は存続していることになります。

 

一方で、著作権については、以下に述べるような利用形態であれば、権利者の許諾を得ずに、無償で著作物を利用することができます。

(1)営利を目的としない演奏の場合(著38条1項)

 公表された楽曲(本事案では歌詞の部分)であって、営利を目的とせず、聴衆・観衆から料金を受けず、かつ、演奏する者に対して報酬が支払われない場合には、許諾を得ずに、無償で利用できます。

 

 これは、著作物を原作のままで利用する場合に限られ、一部の省略やアレンジして演奏するような翻案利用は認められません(翻案を認めている著43条には、著38条は入っていません)。

 

以下、詳細についてご説明します。

 

 ①「営利を目的とせず」という要件は、演奏という行為によって直接的には利益を得なくても、間接的に利益が得られる場合には、営利目的になってしまうということです。

 例えば、入場は無料であっても、演奏会場で何らかの商品の販売や何らかの営利目的のサークル、クラブ、組織への入会、会員の募集をするような場合、ある商品の購入者に入場を限定しているような場合には、その演奏会が、それらの集客を目的に行われていると判断され、営利目的と判断される可能性があります。

 また、演奏行為によって第三者が利益を得るような場合、例えば、ある企業の宣伝のために行われる演奏会のような場合にも、営利目的と判断される可能性があります。

 

 ②「聴衆等から料金を受けない」場合の「料金」は、演奏会での会場整理費、クロークでの一時預かり料金、プログラム料金、飲料料金など、演奏とは関係なく提供されるものの実費ないし通常の料金の範囲内であれば料金ではないと考えられています。

 また、料金はいずれの名目をもってするかを問わないので(著38条1項かっこ書)、例えば、聴衆から入場料の名目ではなく、寄付金というような形で徴収される場合には、その寄付金は「料金」に当たるとされた東京地裁の判例がある点に注意してください。

 

 ③演奏を行う者に対して報酬が支払われない場合の「報酬」は、金銭による報酬だけでなく、豪華な記念品や通常の飲食を超える接待なども「報酬」に該当する可能性があります。

 一方、通常の花束、記念品、食事代、交通費の実費などは「報酬」ではないと考えられています。

 また、演奏を職業としている演奏者が、何処かの組織や団体に所属しており、そこから給与を得るような場合には、「報酬」に該当する可能性があります。

(2)出所の明示義務(著48条1項3号・2項)

  上述しましたように、営利を目的とせずに演奏する場合には、原則として、その著作物(小説)の出所を明示する義務が発生します。

 

 この出所の明示は、演奏するにおいて、そのような慣行がある場合に限られますが、演奏の場合に出所明示の慣行があるかは定かではありませんが、著作物を利用するほとんどの場合、明示の慣行があると考えていいと思われます。

 出所の明示義務に違反しますと著作権侵害とはなりませんが、出所明示義務の違反の罪(著122条)が科されます。また、損害賠償を請求される可能性もあります。

 この出所の明示は、基本的事項として、利用する小説の題号と著作者名が必要となります。

 また、出版社名や発行年月日の表示もした方がいいかもしれません。

 ただし、出所の明示に伴って、著作者名が明らかになる場合や著作物が無名のものである場合には、著作物に表示されている著作者名を明示する必要はなくなります(著48条2項)。

 例えば、「○○著作集」のように小説の題号中に著作者名が含まれているような場合です。

(3)私的使用の目的で複製する場合(著30条)

著作権法上「複製」とは、印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいいます(著2条1項15号)。すなわち、複製の方法については限定がないので、有形的な再製にかかるすべての方法が「複製」となります。

例えば、合唱する際に用いる楽譜に著作物たる歌詞(小説)を入れる行為やその楽譜をコピー等する行為も複製となります。

一方で、私的使用の目的の場合には、許諾なく複製することができます(著30条)。私的使用できる条件は、①個人的又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること、②使用する者ご自身が複製すること、③公衆に使用されることを目的として設置されている自動複製機器で複製しないことなどです。

質問者様が、ご自身でコンビニなどに設置されている公衆用のコピー機以外の機器によって複写するのでしたら、上記の②と③はクリアーします。ここで問題となるのは①の条件です。

「個人的に」とは、「一人で」という趣旨ですので、本事案では一人で使用することを目的として複製するわけではございませんので、「個人的に」には該当いたしません。また、「家庭内」での使用でもありません。

「その他これに準ずる限られた範囲内」については、その解釈について様々な学説がありますが、大方は次のように説明されています。「複製する者の属するグル ープのメンバー相互間に強い個人的結合関係のあることが必要で、部数を限定して友人に配布するような場合は該当しない。典型的には、社内の同好会とかサークルのように10人程度が1つの趣味なり活動なりを目的として集まっている限定されたごく少数のグループということ」、「これに準ずる限られた範囲内に該当するためには、相手方との間に家族に準ずる程度の親密かつ閉鎖的な関係があることが必要であり、相手方が不特定の者であってはならない。」

したがいまして、歌詞入りの楽譜を上述しましたように私的使用の目的で複製するか否かによって複製権侵害の有無が判断されます。

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