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patent777
patent777, 弁理士
カテゴリ: 特許・商標・著作権
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特許権の分割譲渡契約

質問者の質問

質問させて頂きます。特許権の分割譲渡契約を当社顧客Aと締結し現金を受け取りましたが、特許原簿への登録を現段階ではせず、侵害訴 訟をこちらで行い、裁判の結審後に特許原簿への登録を行う同意書をもらっておったのですが、Aの代理弁護士から特許庁への登録が効力発生要件で前記特許権の持ち分譲渡は無効で、当社が持ち分の譲渡が効力を生じないにも関わらず、あたかも生じるかのように装い、Aから金員を搾取したので詐欺による取消し事由で全額お金の返還を求められました。どうなのでしょうか?全額返還しなければいけないのでしょうか?譲渡自体が無効なのでしょうか?    宜しく御回答お願い致します。 ちなみに、当社の特許登録は当然完了しております。その後の譲渡契約です。
投稿: 4 年 前.
カテゴリ: 特許・商標・著作権
専門家:  patent777 返答済み 4 年 前.

知的財産権を専門に扱う弁理士です。知的財産の観点からご説明いたします。

 

質問内容では、質問者様(以下「甲」とします)が特許権を所有しているのか、それとも、顧客A(以下「乙」とします)が特許権を所有しているのか少し分かりずらいのですが、おそらく甲が特許権を所有しているのではないかと思われますので、それを前提にご説明いたします。

 

まず、特許権の譲渡は、相続その他の一般承継を除いて、確かに登録が効力発生要件です(特許法(以下「特」とします)98条1項1号)。

 

そのため、譲受人である乙が譲渡人である甲やその他の第三者にその特許権を有していることを主張するためには、特許庁に備える特許原簿に登録されていることが必要となります(特27条1項1号)。

 

また、特許権の登録は、原則として登録権利者である乙と登録義務者である甲が共同して申請しなければなりません(特許登録令(以下「令」とします)18条)。

 

ただし、登録義務者甲の承諾書を添付したとき、または、判決又は一般承継による登録は登録権利者乙だけで申請することができます(令19条、同20条)。

 

また、我が国では公信力は認められていないため、単に登録しただけでは、登録の効力は発生せず、登録の前提となる実質的な要件を満たしていなければなりません。

 

例えば、偽造した譲渡証などを添付して登録申請をし、登録されても効力は生じません。

 

そこで、本事案について考えてみますと、甲と乙は、事前に特許権の分割譲渡契約を締結しているだけで、未だ登録していない段階ですので、登録の効力は生じていません。

 

また、当該契約を締結していますので、甲は乙に対して、その契約を履行する義務(負債)を負っていることになります。そのため、甲が乙と共同して移転登録申請をしなければ、甲に債務不履行の損害賠償請求責任が生じると考えられます(民法415条)。

 

ただし、甲は乙から「特許原簿への登録を現段階ではせず、侵害訴訟をこちらで行い、裁判の結審後に特許原簿への登録を行う同意書もらっていた」わけですから、現段階で登録をしていないことに関して、契約の履行上、甲に不備があるとは考えられません。

 

一方、詐欺に該当するか否かについてですが、一般法の問題となりますので、詳しい説明はできませんが、詐欺とは、そもそも当初から相手方を欺く意図をもっていながらある行為を行う場合、すなわち故意による場合でなければ詐欺には当たらないと思われます。

 

本事案では甲が乙に対して、契約時に譲渡は登録が効力発生要件であることを告げていなかったようですので、乙は契約した時点で、登録なく譲渡の効力が生じるのだと誤解していたようですね。

 

甲が譲渡は登録が効力発生要件であることを知っていながら、契約の相手方である乙にその事実を知らせていなかったのであれば、故意ないし悪意と捉えられ、詐欺となる場合もあるのかもしれませんが、甲自身が登録が効力発生要件であることを知らなかったわけですから、いわゆる法の不知の場合は、乙を欺く意図がそもそもないわけですから、詐欺には該当しないと思われます。

 

ここで、特許権の分割譲渡について少しご説明いたします。

 

この「分割」の意味ですが、甲が複数の特許権を有しており、そのうちの一ないし、いくつかの特許権を乙に譲渡する、という意味であるのでしたら、特許権の「分割」譲渡は可能です。

 

しかし、甲が一の特許権のみを有しており、その特許権に複数の請求項(すなわち複数の発明)が含まれていて、そのうちの一ないし、いくつかの請求項(発明)のみを分割して譲渡するという意味でしたら、特許法上、それはできません。

 

特許権は複数の請求項を有していても、一の特許権しか発生しません。各請求項ごとに特許権は生じるものではありません。

 

そのため、特許法上、各請求項ごとに「分割」して譲渡することはできません。

私的契約でそのような内容とすることは可能ですが、特許法上、分割して譲渡できないので、登録をすることもできませんので、ご注意してください。

 

この場合、特許法上では、甲の持分を一部、乙に譲渡することは可能です。

この持分譲渡は、一の特許権を甲と乙が共有することとなります。

 

持分比率は、特許発明の実施には何ら影響を与えず、例えば、持分1%の者が持分99%の者の実施能力(生産設備、販売能力など)を遥かに超える実施をすることも可能です。

 

ただ、特許権の移転やライセンス等の際に受け取る対価について、その持分比率に応じた額を分配することになります。

 

持分を共有としますと、自己の持分を他人に譲渡する場合、ライセンス契約を締結する場合、質権を設定する場合などには、他の共有者の同意が必要となり、(特73条1項、同3項)、また、訂正審判などを請求する場合にも共有者全員で請求する必要がある(特132条3項)といった制限がつきますので、注意が必要となります。

 

一方、差止請求や損害賠償請求などの訴訟は単独で提起できます。

 

 

 

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