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出版されている小説の物語を、基本的に一字一句変えることなく朗読するとして、公開の場でお客を募り、発表するという場合で

解決済みの質問:

出版されている小説の物語を、基本的に一字一句変えることなく朗読するとして、公開の場でお客を募り、発表するという場合では、どのような手続きが必要でしょうか。
よく、死後50年?経過した作家の著作権は切れている、と聴きますが、現存の、いわゆる現代の人気作家のものを手がけることは、障害がありますか。
おしえてください。
投稿: 5 年 前.
カテゴリ: 特許・商標・著作権
専門家:  patent777 返答済み 5 年 前.

 著作者(小説の場合は作家)は、著作者人格権である公表権(著作権法(以下「著」)18条)、氏名表示権(著19条)、同一性保持権(著20条)および著作権である複製権(著21条)、上演・演奏権(著22条)、上映権(著22条の2)、公衆送信権(著23条)、口述権(著24条)、展示権(25条)などを有しています。

 著作者が著作権を他人に譲渡している場合には、著作者人格権は著作者が、著作権は譲受人が、別々に有していることになります。なお、著作者人格権は譲渡することができません。

 このため、著作物(本事案では小説)を利用する場合には、原則として、著作者人格権と著作権の双方の利用許諾を得る必要があります(著63条1項・2項)。無断で利用した場合には、差止請求(著112条)、損害賠償請求(民法709条)、刑事罰(著119条)などの対象となります。

 

 一方、著作権は原則として、著作者の死後50年経過したときは消滅します(著51条2項)。無名または変名の著作物の著作権は原則として、その著作物の公表後50年を経過したときに消滅します(著52条1項前段)。

 このように著作権が消滅している場合には、無許諾で著作物を利用することができます。ただし、著作者人格権については、原則として、保護期間の限定はなく、永久に存続することになります(著60条)。

 そのため、著作者の死後であっても著作者人格権を侵害するような利用をすると、その遺族等が差止請求(著116条)や名誉回復措置の請求(著115条)をすることができます。

 もっとも、請求できる者は、二親等までの親族または遺言で指定された者ですので、その遺族等が存しなくなっている場合には、人格権は問題とはなりません。

 

 そこで、著作者が現存している場合について以下ご説明します。

 

1.問題となる権利

 本事案では、すでに「出版されている小説の物語」を、基本的に「一字一句変えることなく」、「朗読」するとして、「公開の場でお客を募り、発表する」という利用形態です。

 この場合には、出版されている著作物の利用ですので公表権は問題とならず、一字一句変えることがないので同一性保持権も問題とはならず、著作者人格権でいえば、氏名表示権だけが問題となります。

 また、「朗読」は、著作権法上、口述に該当しますので(著2条1項18号)、著作権のうち口述権のみが問題となります。

 なお、本事案における発表会が、予め朗読を録音ないし録画しておき、その録音物などを会場で再生するような利用形態であれば、朗読を録音等する行為について複製権(著21条)が、再生することについて口述権(著24条)が働きます(著2条7項)。

 

2.利用許諾を得ずに利用できる場合

 しかし、上述した氏名表示権や口述権については、以下に述べるような利用形態であれば、権利者の許諾を得ずに、無償で著作物を利用することができます。

 

(1)営利を目的としない口述(朗読)の場合(著38条1項)

 公表された小説であって、営利を目的とせず、聴衆・観衆から料金を受けず、かつ、朗読を行う者に対して報酬が支払われない場合には、許諾を得ずに、無償で利用できます。

 

 これは、著作物を原作のままで利用する場合に限られ、一部の省略やアレンジして朗読するような翻案利用は認められません(翻案を認めている著43条には、著38条は入っていません)。

 改変して利用すると、同一性保持権や翻案権(著27条、28条)の問題が生じてきます。ただ、客観的にやむを得ない事情により翻案せざるを得ないと認められ場合には、多少、翻案できる余地はあるのではないかと思われます。

以下、詳細についてご説明します。

 

 ①「営利を目的とせず」という要件は、朗読という行為によって直接的には利益を得なくても、間接的に利益が得られる場合には、営利目的になってしまうということです。

 例えば、入場は無料であっても、朗読会場で何らかの商品の販売や何らかの営利目的のサークル、クラブ、組織への入会、会員の募集をするような場合、ある商品の購入者に入場を限定しているような場合には、その朗読会が、それらの集客を目的に行われていると判断され、営利目的と判断される可能性があります。

 また、朗読行為によって第三者が利益を得るような場合、例えば、ある企業の宣伝のために行われる朗読会のような場合にも、営利目的と判断される可能性があります。

 

 ②「聴衆等から料金を受けない」場合の「料金」は、朗読会での会場整理費、クロークでの一時預かり料金、プログラム料金、飲料料金など、朗読とは関係なく提供されるものの実費ないし通常の料金の範囲内であれば料金ではないと考えられています。

 本事案の発表会は、入場無料で行うとのことですので、問題はないと思われますが、料金はいずれの名目をもってするかを問わないので(著38条1項かっこ書)、例えば、聴衆から入場料の名目ではなく、寄付金というような形で徴収される場合には、その寄付金は「料金」に当たるとされた東京地裁の判例がある点に注意してください。

 

 ③朗読を行う者に対して報酬が支払われない場合の「報酬」は、金銭による報酬だけでなく、豪華な記念品や通常の飲食を超える接待なども「報酬」に該当する可能性があります。

 一方、通常の花束、記念品、食事代、交通費の実費などは「報酬」ではないと考えられています。

 また、朗読を職業としている朗読者(現実に存在するかは別としまして)が、何処かの組織や団体に所属しており、そこから給与を得るような場合には、「報酬」に該当する可能性があります。

 

(2)出所の明示義務(著48条1項3号・2項)

  上述しましたように、営利を目的とせずに朗読する場合には、原則として、その著作物(小説)の出所を明示する義務が発生します。

 出所の明示は、朗読するにおいて、そのような慣行がある場合に限られますが、朗読の場合に出所明示の慣行があるかは定かではありませんが、著作物を利用するほとんどの場合、明示の慣行があると考えていいと思われます。

 この出所を明示することによって、氏名表示権の問題も解消すると考えられます。

 

 出所の明示義務に違反しますと著作権侵害とはなりませんが、出所明示義務の違反の罪(著122条)が科されます。また、損害賠償を請求される可能性もあります。

 

 この出所の明示は、基本的事項として、利用する小説の題号と著作者名が必要となります。

 また、出版社名や発行年月日の表示もした方がいいと思われます。

 ただし、出所の明示に伴って、著作者名が明らかになる場合や著作物が無名のものである場合には、著作物に表示されている著作者名を明示する必要はなくなります(著48条2項)。

 例えば、「○○著作集」のように小説の題号中に著作者名が含まれているような場合です。

 

 したがいまして、著作者の死亡などにより著作権が消滅しており、著作者人格権についても遺族等が存しない場合には、許諾を得ずに、無償で朗読することができ、遺族等が存在する場合でも、出所明示により、氏名表示をしていれば、著作者人格権を行使されずに朗読することができると思われます。

 また、著作権等が存続している場合であっても、上述しましたように、営利を目的としない場合には、出所を明示することにより、許諾を得ずに、無償で朗読することができます。

 それ以外の場合には、著作者(著作権が譲渡されている場合には、著作者と著作権者)と利用許諾契約を締結する必要があります。

 

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